この春、不動産業界が仰天しているのが、「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)が告発した不動産仲介業者による物件の“囲い込み”問題報道だ。
不動産仲介業者の仲介手数料は、例えば成約価格が400万円超であれば、「成約価格の3%+6万円」といった法定上限を自社の顧客に求めるのが一般的だ。自社に問い合わせをしてきた売り主もしくは買い主に、この金額を請求することになる。
しかし、より多くの仲介手数料を得るために、仲介業者の中には売り主と買い主の双方の仲介を1社で行う「両手仲介」をもくろむ業者もある。両手仲介は法律で禁止されておらず、民主党政権時代に禁止の方向に動いたことがあったが、自民党政権に戻り、沙汰やみになっている。
両手仲介を行うために、他の仲介業者からの買い希望に対して「すでに購入希望者があり検討中」などと偽って断り、物件の“囲い込み”をする業者がいるという。なお、“囲い込み”(故意に情報を隠したり独占すること)は宅地建物取引業法で禁じられているが、監督すべき国土交通省は実態調査を積極的に行ってはいない。
この“囲い込み”は、両手仲介ができる仲介業者にとってはおいしいが、買いたい物件がなかなか買えない買い主、売りたい物件がなかなか売れない売り主が続出して不動産仲介市場は非効率なものとなり、消費者の不信感も募る原因となっていた。
住友不動産の元社員が暴露
“囲い込み”は大手業者も行っていると、これまでも業界からは指摘されていたのだが、広告タブーの多い紙媒体のメディアでは実名が出てくることがなかった。
しかし、「週刊ダイヤモンド」(4月11日号)の第2特集『住友不動産“非常識経営”の功罪』では、住友不動産の連結子会社で不動産仲介事業を行う住友不動産販売が“囲い込み”を行っている事実を明らかにした。
同特集の中で、最近まで社員だった人物が「歴代の所長の多くが、両手仲介でないと契約を承認してくれなかった」と証言しているのだ。
さらに、住友不動産販売は「業界で“紙爆弾”ともいわれる大量のチラシ投函による集客」を行っているという。このチラシは「あなたの家を買いたい人がいます」などと魅力的な条件が書かれているのだが、「チラシの内容は多くの場合、虚偽です。所長からは“買いたい客が実在するかのように具体的に書け”“売却想定金額を高めに書け”とよく言われました」(同記事より)と爆弾証言が掲載されている。