一方、北海道が地盤のアークスは2期連続の営業減益で、山形県のヤマザワも営業減益決算。中国地方が地盤の天満屋ストアは営業収益5.1%減の減収で、四国のフジはわずか0.1%の増収にとどまっている。広島が本拠のマックスバリュ西日本は営業収益1.7%増、営業利益3.0%増。比較的好調だった九州・沖縄エリアでも、マックスバリュ九州は営業利益が35.6%減と大幅減益だった。和歌山県、奈良県、三重県を中心に店舗網を持つオークワは、営業収益が6.3%減、営業利益が31.9%減で、不振の近畿地方を代表するような業績になっている。
このように、食品スーパーは小売業の中でも好調な業態といわれ、その一部は兜町でももてはやされて株価が上がったが、首都圏と中京圏のスーパーの好調さが全体を引き上げているのが実情。関東と中部が良すぎるともいえるが、それ以外の地方の食品スーパーは、それほど景気がいいわけではない。
食品スーパーは「地方創生」のリトマス試験紙?
不況下でも食品は購入するが、収入が増えなければ財布のヒモは固くなる。魚なら高級魚から大衆魚、1匹買いから切り身にシフトし、肉ならブランドからノーブランド、牛肉から豚肉や鶏肉にシフトする。アベノミクスの恩恵が地方まで十分に行きわたっておらず、むしろ地方経済の厳しさが増しているのなら、それは個人消費に反映し、食品スーパーの月次の販売実績や業績に影響を及ぼす。
地方経済の厳しさを確かめる手がかりになりそうな政府発表の経済指標が、「毎月勤労統計調査」(厚生労働省)の現金給与総額である。これは集計が遅れるが、都道府県別のデータがある。「労働力調査」(総務省)のそのエリアの有効求人倍率が伸びず、失業率が高止まりすれば、現金給与総額も伸び悩む傾向がある。それは小売業にとっては売り上げ減につながり、歓迎できない現象だ。
規模30人以上の事業所の現金給与総額を、12年3月と14年3月のデータで比較してみる。2年間で全国平均では0.07%上昇し、東京都は0.8%、大阪府は1.5%それぞれ上昇しているが、その間に青森県が0.6%減、福島県が1.3%減、長野県が1.2%減、滋賀県が0.5%減、徳島県が0.8%減、高知県が2.9%減、鹿児島県が4.0%減など、減少した県が15もあった。アベノミクスについては「物価の上昇に賃金の上昇が追いついていない」とよく言われてきたが、概していえば、大都市圏から地方に行くほど収入がなかなか上がらず、逆に減る傾向すら見られる。これがアベノミクスの急所「地方経済の出遅れ」「地域格差」である。