SDRは、IMF加盟国が出資額に応じて割り当てられる仮想通貨で、経済危機などで外貨不足に陥った際には、SDRと引き換えに、ほかの加盟国からドル、ユーロ、円、ポンドの構成通貨を融通してもらうことができる。
人民元はSDRの5番目の構成通貨になると同時に、構成比でドル(41.73%)、ユーロ(30.93%)に次いで3位(10.92%)となり、円(8.33%)やポンド(8.09%)を上回った。
中国は、以前から人民元のSDR入りを強く求めており、今回は念願かなって採用されたかたちだ。これにより、国際社会から主要通貨として認められたことを意味し、中国経済の存在感が高まるともいわれる。
しかし、実際に人民元のSDR入りが意味するところは、なんなのだろうか? 経済評論家の渡邉哲也氏は、以下のように語る。
「今回の発表では、あくまで『人民元のSDR入りが決まっただけ』にすぎない。中国は金融の制度改革を進めているが、IMFは決定後の会見で『中国が多大な努力を重ねてきたことは明らか』とした上で、改革継続を求める姿勢を打ち出している。つまり、今回のSDR入りは『人民元改革を進める』という“条件つき”ということだ。
中国が改革、つまり人民元の自由化を本気で進めるのであれば、現在の管理変動相場制から完全変動相場制に移行することになる。しかし、そうなると人民元は大暴落する危険もある。また、現在の中国は計画経済的な政策をとっているが、自由化となれば、当然ながら市場に任せることになる。
そうなると、すでに起き始めているバブル崩壊が促進される可能性が高い。『金融の自由化=情報の自由化』であり、真の自由化を進めた時に、今の中国の歪んだ自由主義経済が維持できるのかどうか、という本質的な問題も浮かび上がってくるだろう」
アメリカと一触即発の中国
近年の中国は、人民元のSDR入りを強く求めると同時に、人民元改革にも乗り出していた。それは、IMFなど国際社会の要請に応えてのことだ。しかし、中国経済は今年6月に株式が暴落し、8月には政府が介入して人民元の対ドル切り下げを行うなど、相変わらず不安定な状況が続いている。