特に、マンションストックの増加に伴って、中古市場に出てくるマンションの竣工後の経過年数が長くなっている点に注意が必要です。東日本不動産流通機構の調査によると、図表4にある通り、首都圏の仲介市場で新規登録されたマンションのうち、築31年以上の物件の割合は08年には15%ほどだったのが、18年には35%以上に達しています。3戸に1戸以上が築31年以上の築深物件なのです。
当然ながら、経過年数が長くなれば老朽化が進み、外壁や共用部分が傷んでくるだけではなく、専有部の内装や設備も劣化が進んでいます。中古だから価格が安いといっても、リフォームやリノベーションに多額の費用がかかっては、安さのメリットが吹き飛んでしまいます。
安さのメリットを享受するなら築深物件
反対に、築10年までのいわゆる築浅マンションの割合は急速に減少しています。図表4にあるように、最近では新規登録の2割を切っているのです。
2000年代に入ってから「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づいて、構造部分の10年保証が義務化され、任意ながら住宅性能表示制度が導入されて、それを採用する新築マンションが増えてきました。また、09年には長期優良住宅制度が施行されて、マンションでも認定を受ける物件がジワジワと増えるなど、この10年ほどは新築マンションの基本性能が著しく向上しています。
しかし、そうした築浅のマンションは新築と比べての割安感が小さく、中古マンションの価格面でのメリットをさほど享受できません。人気エリアでは新築並みの価格で取引されており、エリアによっては新築が不足しているので、むしろ分譲時の価格より高く取引されているケースもあります。これでは、“中古マンション主役元年”の時代のメリットを活かせません。“中古マンション主役元年”のメリットを最大限享受するためには、築深物件に注目する必要がありますが、その見極めは簡単ではありません。その点に関しては次回、詳しくみていくことにしましょう。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)