それはともあれ、この制度を利用できる人のメリットは小さくありません。
非課税枠のフル活用で545万円の税金がゼロですむ
やはり土地・建物2000万円ずつ、合計4000万円の新築マンションを買う場合、先に触れたように消費税の負担増加分は40万円です。
それに対して両親などからの3110万円の贈与を受けられるケースを想定してみましょう。税率8%時だと非課税枠は最大1200万円ですから、基礎控除と合わせて1310万円まで非課税です。3110万円のうち1310万円を引いた1800万円が課税対象になります。課税対象額が1800万円だと税率は45%で、贈与税はこうなります。
・1800万円×0.45(45%)-265万円=545万円
3110万円もらっても、実際に住宅取得に充てられるのは2565万円に減ってしまうわけです。4000万円のマンションなら、贈与以外に1435万円を用意しなければなりません。消費税8%で買えて多少消費税が安くなったとしても、この贈与税負担が重くのしかかってきます。
しかし、16年10月以降税率10%で取得すれば、3110万円全額が非課税になって、贈与税はゼロですみます。4000万円のマンションなら贈与のほかに890万円準備すればいいわけで、消費税の負担が40万円増えたとしても、こちらのほうが圧倒的に有利になります。
購入希望物件や置かれている環境で対応策は異なる
消費税の引き上げといっても、そもそも通常の中古住宅の購入を考えている人ならまったく関係のない話ですし、注文住宅を建てたい人なら今年の9月末までに契約したほうがいいかもしれません。でも、すまい給付金を考慮すれば年収などによっては、実質的な負担に変化がない人もいます。
また、両親や祖父母などから多額の贈与を期待できる人であれば、むしろ増税後に買ったほうが結果的にトクすることになります。
購入希望物件やみなさんの置かれている環境などをしっかりと確認して、もっとも有利なタイミングを見つける必要がありそうです。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)
●山下和之(やました・かずゆき)
住宅ジャーナリスト。各種新聞・雑誌、ポータルサイトなどの取材・原稿制作のほか、単行本執筆、各種セミナー講師、メディア出演など多方面に活動。「山下和之のよい家選び」(http://yoiie1.sblo.jp/)も好評。主な著書に『よくわかる不動産業界』(日本実業出版社)、『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(学研パブリッシング)など。