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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

自由業は「不」自由業?「会社を辞めて独立」の落とし穴…会社員優遇の様々な保障失い…

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー

 安定的かどうかは別にしても、長期で収入を得られるという点では、(1)(2)は魅力的だ。とりわけ収入に関しては、60歳以降の人に知っておいてもらいたいことがある。

 定年退職後のベースとなる公的年金だが、60歳以降も厚生年金に加入して働く場合、年金の一部または全額が支給停止になる点だ。

 つまり、引き続き会社員でいると年金のほうが減らされるのだが、この仕組みを「在職老齢年金制度」という。支給停止の方法は60歳台前半(60歳~64歳)と、60歳台後半(65歳~69歳)で異なる(平成19年4月以降、70歳以上の被用者も在職老齢年金の適用対象)。これが、自営業者等になれば、公的年金の調整は行われず、満額受給できる。

 また(3)についても、私自身を振り返ってみると、独立した当初は無我夢中で、とにかく舞い込んだ仕事のオファーを一生懸命こなすのが精一杯。それが徐々に、自分の仕事の方向性が見えてくると、案件をプロデュースしたり、クライアントに提案したりといった機会も増え、それが非常に面白いし、モチベーションにつながっていく。

自営業者等の4つのデメリットとは?

 一方のデメリットとしては、以下の4つが挙げられる。

(1)成功も失敗もすべて自己責任
(2)会社の社会的信用などがない
(3)時間の融通が利かなくなる
(4)自己管理能力が問われる

 このうち(3)については、「独立すれば自由な時間が手に入れられる」と考える人が多いかもしれないが、現実はそう甘くない。仕事がなければ、空いた時間は自由といえばそれまでだが、仕事をしていなくても、勉強会に参加したり、メールチェックや請求書作成などの雑務をこなしたりしている。個々の裁量で働く時間を調整できる幅はあるが、業務内容等によっては、“不”自由業の可能性も高くなる。

 また、代替がきかない業務が多いので、自営業者等は、体力・健康が第一である。スケジュール調整や健康管理などの自己管理能力が問われる。「自分で自分を律するのは自信がない」という人は、向いていないかもしれない。

自営業者等のマネープランの二大ポイントとは?

 
 これらのメリット・デメリットを踏まえて、自営業者等が考えておくべきマネープランを立てる上での注意点は次の2つである。

(1)収入が不安定になりやすいこと
(2)保障(補償)が薄いこと

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
https://www.naoko-kuroda.com/

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