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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

親の介護で破産する人続出…施設の利用料滞納で、突然に子供へ数百万円の請求

文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ代表、保険・介護・医療ジャーナリスト

 ライフプランの読み違いは、介護現場でも実際に起こり始めている。特に問題となるのが施設入所者だ。せっかく納得する施設を見つけて入所しながら、預貯金が底をついて、入所費用の支払いが滞り、施設を出なければならない事態が起こっている。こうした場合、次の受け入れ先を探さないといけないが、次の受け入れ先に協力的な施設ばかりでもないのが現実だ。入所時の態度や滞納に関する話し合いのなかで、施設側とトラブルになることもあるからだ。

 だが、本当の悲劇はここからだ。

人生100年時代

 有料老人施設側にしても滞納が続けば、運営に大きく支障をきたしてしまう。そこで施設はどうするのかといえば、親族に未納分の返済を求める。支払えればいいが、支払えない悲劇の先に待ち受けるものは何か。

 実際の未納分の返済は償却期間などがあって一人ひとり違い、複雑な計算をする。あくまでもイメージしやすいように、乱暴ながらも説明をしたい。

 有料老人施設は住宅購入のようなもので、入所費は頭金、月々の部屋代は毎月の住宅ローン代といえば、理解しやすいだろうか。国が積極的に入所費ゼロを掲げてはいるが、当然、入所費(頭金)がゼロのケースと入所費1000万円のケースとでは、月々の支払いはゼロのほうが高くなる。

 AさんとBさんが同時に入所して5年間、滞ることなく、支払いを続けたが、6年目からAさんが滞納をしたとする。Aさんは入所費ゼロで月々の使用料30万円、Bさんは入所費1000万円で月々の支払いが20万円とした場合の差額を計算すると、次のようになる。

【Aさんが5年間に支払った額】
30万円×12カ月×5年=1800万円

【Bさんが5年間に支払った額】
1000万円+(20万円×12カ月×5年)=2200万円

 すでに支払い済みの金額に400万円の差がある。施設側にしても入所者の公平感からしても、この差額を見過ごすことはできないはずだ。多くの施設では2カ月以上の滞納となると、話し合いの場が持たれ、未納分の支払いが滞った上に、さらに滞納が続けば、退所勧告を申し渡されるケースが多い。ケースによっては数百万円以上の請求をされることも想定される。

 入所時に、施設は保証人を立てるため、未納分は保証人に請求する。保証人の多くは教育費や住宅ローンを抱えている子どもたちだ。数百万円の出費をいきなり要求されても厳しいのが実態だ。

 ついに、親の介護施設費用が支払えないことによる破産申請者が現れて出だしている。どれほどの葛藤と苦しみを乗り越えた結論かと思うと、胸がつぶれそうだ。何より、心を痛めるのは、保証人に子供がいれば、その子供の進路や生き方にまで大きな影響を及ぼしてしまうことだ。そんなことが起こっていいわけがない。

 子供が社会人になったとたん、それまでの教育費の重圧から解放されたかのように、頻繁に旅行に行ったり、子供の結婚や住宅資金援助、孫の教育費の援助をされる方も多い。親心を否定するつもりは毛頭ない。ただ、“人生100年”時代に突入しているという自覚を持ったうえでの資金援助がこれからは求められる、ということは本当に理解していただきたい。

 親心が仇となって、いざというときに資金不足になったり、子供たちに経済的・肉体的・精神的負担を強いるようでは本末転倒になってしまう。

 親族の話し合いをする前に、一人ひとりが人生100年時代と捉えて、ライフプランを立てることが、早急に求められる。
(文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ代表、保険・介護・医療ジャーナリスト)

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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