ファミリー向けマンション、大余剰時代突入の兆候…賃料&売買価格が大幅下落か
現行の区分所有法では、建て替えの決議は、区分所有者の5分の4の賛成が必要ですが、そうしたさまざまな利害関係がぶつかり、調整は困難を極めます。もし賛成派と反対派に分かれたら、あれほど円満だった住民の間でいがみあいが始まるかもしれません。そうなると日常の生活までギクシャクしてしまいます。
建て替えはあきらめて組合も解散、という可能性もありますが、壊すのもお金がかかります。更地にしてもたいした金額では売れないとわかると、そのままにしておいたほうがよいという判断になるかもしれない。かくしてその物件はゴーストタウン化し、まともな値段で貸すことも売ることも難しくなります。
以上はちょっと悲観的過ぎる予測であり、その前に建て替えがスムーズにできるスキームや法整備が進めばこのような心配もなくなるとは思います。組合が区分所有権を買い取る事例もあるようです。
出口戦略
今回私が売却した物件は都心にあるので、郊外型マンションよりもそうしたリスクは低いとは思います。しかし起こらないとは限らず、そういう不確実性は避けたい。
そのとき、賃貸で入居中の投資物件のままだと利回りで判断されますが、空室状態なら実需の引き合いがあるため、利回りとは関係のない要素で判断されます。つまり一般的には、ファミリータイプのマンションは空室のほうが高値がつきやすい。
しかしもし今回売却を見送って賃借人が決まってしまうと、追い出すことは現実的ではないため、次の売却のタイミングを失うかもしれない。
また、次の買い手がもし住宅ローンを使うとなると、築年数も30年を過ぎないうちがよさそうである。
しかも今は住宅市場はまだ活況で、買い叩かれるリスクも小さい。暴落というほどの地価下落の可能性は小さいけれども、売れる時に売って利益確定しておくのも出口戦略のひとつ。そう考えて売却を判断しました。
逆に考えると、これから中古マンションを購入しようと考えている人は、安く買える一方で、その値段には将来の修繕や建て替えのリスクが織り込まれているということを認識しておいたほうがよいかもしれません。
(文=午堂登紀雄/米国公認会計士、エデュビジョン代表取締役)