子供が自転車事故で相手重傷、賠償1億円支払い命令も…重要性増す「保険」の選び方
兵庫県では、15年4月に「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」が施行され、同年10月から利用者の賠償責任保険の加入を義務化。これに続いて都道府県レベルでは、大阪府(16年4月に条例を施行し同年7月から)、滋賀県(16年2月に条例を施行し同年10月から)、鹿児島県(17年3月に条例を施行し同年10月から)、京都府(17年7月に条例を改正し同年10月から)などが義務化している。
また、横浜市や千葉県などでは加入を推奨。大和市など自治体負担による自転車保険の加入を行う自治体など、独自の動きが全国で広がりつつある。
自転車保険の種類や加入方法が多様化
このように加入への関心が行政レベルで高まっている自転車保険だが、基本的には自分自身の傷害(ケガ)の補償と個人賠償責任補償を組み合わせた商品である。
自転車事故のほか日常生活における事故も補償対象となるのが特徴で、各自治体では義務化に合わせ、各地の交通安全協会が独自の自転車保険制度を創設している。
加入する場合は、商品を提供している損害保険会社や代理店、少額短期保険などで加入する方法のほか、全国のコンビニエンスストアで24時間365日いつでも気軽に加入できる。
さらに、特定の携帯電話会社(キャリア)ユーザー向け、クレジットカードホルダー向けといった特定の会員向けにサービスを提供している商品もあり、加入方法も多様化している。
主な補償内容は、損害賠償補償が1,000万円~最大5億円のほか、死亡・後遺障害、入院、通院、手術などもカバー。個人プランや家族プラン、補償の充実度に応じてコースを分けているものや、示談代行サービス、自転車ロードサービス、生活サポートサービス、海外での事故も対象にしているものなどさまざまだ。
おそらく自転車保険といえば、自転車安全整備店で自転車を購入あるいは点検整備を受けると付帯される「TSマーク付帯保険」がすぐに頭に思い浮かぶかもしれない。
これは、自転車そのものに付けられている保険なので、誰が乗っても補償が適用される。ただし、補償期間は1年で、補償限度額も設けられており、どちらかといえば最低限の補償といったイメージだろう(「青色TSマーク」と「赤色TSマーク」があり、後者の方が補償は手厚い。なお、2017年10月1日より、赤色TSマークの賠償責任保険の限度額が改定<5,000万円→1億円>)。
自転車保険を選ぶポイントは? 重複適用がないかチェックも必要
自転車保険を選ぶポイントは、最近の高額賠償に対応できるだけの補償が付加されているかも含め、保険料の割安なものから比較してみて、自分や家族が自転車を利用する頻度やリスクを考慮し、必要な補償をプラスしていくようにしよう。
あまり差が感じられないのであれば、会員特典が受けられる、すべてネットで契約が完結するなど、利便性や付加価値の高い商品を優先的に検討する手もある。
ただし、個人賠償責任補償は、自動車保険や火災保険、傷害保険に特約として付帯されていることもある。損害保険の場合、重複加入していても補償額が倍になるわけではない。すでに補償がついていないか、自転車保険を検討する前に、自身が加入している保険契約を見直してみよう。
とにかく、原則として自転車保険には、自動車保険の自賠責保険のように必ず加入しなければならない強制保険はない。自転車保険の加入者は40代を中心として、自転車を利用する小中学生の子どもを持つ親などが多いという(まさに筆者はこれに該当する)。
自動車に比べて手軽に利用できる自転車は、自分や家族が加害者もしくは被害者になる可能性が高い乗り物だ。人の生死にかかわる生命保険も大切だが、損害保険についても必要性を認識しておいていただきたい。
(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)