千葉・柏市、振り込め詐欺が全国平均の2倍…市の画期的対策で劇的効果、市民に責務
――市民の方に理解や協力が得られないことがあったわけですか。
竹之内氏 たとえば、金融機関やコンビニなどでお客様の様子から、職員の方がお声をかける場合があります。ところが、お客様ご自身は詐欺だと思っていませんので、「自分のお金をおろすのに、なぜガタガタ言われなくてはいけないのか」と反論される方も、なかにはいらっしゃいます。ただ金融機関サイドでは、「法的根拠がなく、それ以上、踏み込むことができない」という声がありました。
被害の未然防止数が増加
――金融機関の後ろ盾となるための条例でもあるのですね。ところで、なぜ市での制定となったのですか。県が制定という事例は、ほかにもありますが。
竹之内氏 そこに都道府県と市区町村の役割の違いがあります。多くの市区町村には警察署が配置されていますが、それらは都道府県の組織です。つまり、市区町村では警察力を持ちません。私たちは、住民により近い市区町村ならではの強みを生かそうと考えたのです。市民の協力を得る、市民と継続的に接するといったことは市区町村の得意分野ですからね。
――条例を制定された意義は深かったというわけですね。金融機関などの声掛けの反応も違ってきましたか。
竹之内氏 条例を制定しただけでなく、金融機関などから意見をもらいながら、市民の方の理解を得られやすいようにチラシも作成しました。お声掛けの時には「柏市で条例ができたので、お声を掛けさせていただいています」とお見せしながら、ソフトな対応を心掛けていると聞いています(写真1)。チラシを見せながらの効果はあったようで、お客様とのトラブルは減少したとの感想も届いています。
――チラシに、「もし間違って声をかけられても、温かく受け止めていただくようにお願いします」と書かれているのも、いいですね。効果のほどは、いかがですか。
竹之内氏 金融機関の職員の方などによる被害の未然防止の数は増えています。これにより、条例の浸透・広報の効果が一定程度表れているものと思われます。ただ残念ながら、条例制定以後の本市における振り込め詐欺被害件数は、全国的な傾向に比例するように増加しています。金融機関を経由せず、手渡しによりキャッシュカードを騙し取る手口の増加などが要因と考えられます。犯人も金融機関のチェックが厳格化していることは知っていますから、こういったことの対策は今後の大きな課題です。