米軍との取引は免税になる?
とある八百屋さんが、何年も米軍内のレストランと取引をしていました。すると、税務調査の際に、この取引について指摘を受けてしまいます。
「あなたの取引は免税になりませんよ」
しかし、八百屋さんは修正申告には応じず、更生を打たれたので、しかるべき機関に訴えることにしました。
米軍基地内の売店は、軍人や家族に商品とサービスを提供しています。その法的地位は、「アメリカ政府の歳出外資金による機関」なのだそうです。「歳出外資金」という言葉はよくわかりませんが、おそらく「国のお金ではない民間のお金」といった意味でしょう。軍人用体育館の建設資金やアスレチックの器械購入は歳出資金で行うが、その中にあるジュース・バーの費用は、歳出外資金で行っているといった取り扱いの違いがあり、前者と取引すると免税取引、後者と取引すると課税取引になります。
後者のような“軍人用販売機関”は、アメリカの軍当局が公認し規制する海軍販売所、食堂、社交クラブ、劇場、新聞などが含まれますが、基地内にあっても免税取引となりません。米軍と取引するのは珍しいことでしょうから、一般的な商売人がこのルールを知らないのは当然といえます。
八百屋さんは、米軍の関係者から「免税取引に該当する」という説明と指導を受けたそうです。そして、もしそれが間違っていて課税取引になるのなら、米軍にも注意すべきだと主張しました。米軍に指導をしていない日本の国税局の瑕疵もあると言うのです。
気持ちはとてつもなくわかります。米軍関係者に「ここはアメリカだから、消費税はかからないよ」と言われたら、素人や、ちょっと消費税を勉強したくらいの人なら信じるでしょう。相当調べて、安保条約や日米地位協定、所得税等特例法についても明るくないと、この処理はできません。事実、この八百屋さんの規模は大きく、顧問税理士の存在が窺えます。税のプロである税理士さんでも間違えてしまうのです。
これについては、なんとも気の毒だったと思います。不正の意図はなく、相手を信じて正しく取引をしていたつもりが、過ちを犯す結果になることもあるという事例です。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)