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堀田秀吾「ストレス社会を科学的に元気に生き抜く方法」

「手浴」の驚愕の効能…温泉と同レベルのリラックス効果

文=堀田秀吾/明治大学法学部教授
「手浴」の驚愕の効能…温泉と同レベルのリラックス効果の画像1「Gettyimages」より

 ストレスフルな毎日。日本人であれば、そんな時恋しくなるものといえばやはり「温泉」ではないでしょうか?

 しかし、いざ温泉に行くのは、なかなか難しいですよね。どのエリアの温泉にするか、日程はどうするか、どの旅館に泊まるかの決定に頭を悩ませ、いざ向かうとなれば早起きをして電車に乗って、と温泉にたどり着くまでにもまた新たなストレスや疲労が待ち構えています。

 脳は、たくさんの新しい処理をするとき、時間を長く感じます。どこか初めての場所に行くときに、行きと帰りでは、行きのほうが長く感じたりします。それは、目的地にたどり着くために、脳が知らない、たくさんの新しい情報を処理するためです。同じ理由で、知らない場所に温泉旅行に行く場合も、脳がたくさんの情報を処理しなければならないので、脳に疲れがたまってしまいます。

 また、温泉に入るのも、実は体力をかなり消耗します。しかも何度も入るので、その分疲れがたまっていきます。ですから、実は温泉旅行に行くというのは、気分転換になる反面、のちのち大きな疲労が待ち構えているのです。ですから、温泉旅行から帰ってくるとぐったりするのです(そのおかげで帰ってからぐっすり寝られるということもあるのですが)。

 そこで今回は、自宅で簡単に温泉に入ったのと同様のリラックス効果が得られる「手浴」についてご紹介したいと思います。

お手軽に行えてストレス解消

 手浴とは、手をお湯に浸すことです。この効果については、近年臨床的な研究が次々と発表されてきています。手浴の方法はとても簡単で、38-41℃のお湯に10-15分ほど手を浸すだけです。これにより、「リラックス効果」「ネガティブな気分の改善」「やる気の向上」といった、ストレスを解消し、さらに前向きにもしてくれるという素晴らしい効果が出るのです!

 そもそも手浴の研究は、脳血管障害などにより身体に麻痺があり、容易に入浴ができない患者さんに、お風呂に入ったのと同様のリラックス効果をもたらせる方法はないかという観点から行われた研究なのです。

 なぜこのような効果が生まれるかというと、温かさを感じる「温点」が最も集中している部分が、指、てのひら、前腕だからです。また、手の血管には交感神経支配が集中しています。そのため、手を温めるとこれらの神経に作用して、いろいろな効果が得られるのです。

 たとえば、寒い時にコンビニや自動販売機で買った温かい飲み物を握りしめると、手があたたまるだけでなく、同時になんだかホッとして心も癒やされますよね。それは気のせいではなく、このような仕組みによるものだったのです。

 なにより、温泉やお風呂に入るのではなく、手浴であれば、オフィスやお手洗いで簡単にリラックスできますよね。お仕事中に疲れが溜まって、ちょっと一息つきたいなぁというタイミングで、給湯室のお湯をちょっとした容器にそそいで、しばらくの間手をつけておくだけでOKです。

 たったこれだけで、温泉に入ったときのような幸福感を得られて、ストレス解消、気分も前向きに! となるなんて、お手軽でいい方法ですよね。ぜひお試しください。

 さらにこの研究では、看護師さんが患者さんに手浴を行うと、コミュニケーションがより円滑にとれるようになることがわかっています。実際の研究では、手浴を行っている最中には患者さんが、自分の病気に対する思いや家族に対する思い、そして患者さん自身のことといったプライベートに立ち入った内容を語ることが増えたという結果が見られました。これにより、患者-看護師間の信頼関係が発展し、コミュニケーションがとりやすくなったのです。

 このことから、一人で手浴をするだけではなく、家族や恋人などに手浴をしてあげ、その最中に簡単に手のマッサージをした場合、相手とのコミュニケーションが取りやすくなり、信頼関係も発展させることができるといえます。忙しい毎日ですが、15分弱の時間をとって手浴をすることで、周りの人との関係性の発展、改善にもつながります。

 また、この方法で手浴を行うと、手についている細菌数が明らかに減少することもわかっています。風邪などの病気予防にもぴったりですね。

 お手軽に行えて、ストレスを解消し、やる気を出させてくれる手浴、ぜひ試してみてください!
(文=堀田秀吾/明治大学法学部教授)

堀田秀吾/明治大学法学部教授

堀田秀吾/明治大学法学部教授

 専門は社会言語学、理論言語学、心理言語学、神経言語学、法言語学、コミュニケーション論。研究においては、特に法というコンテキストにおけるコミュニケーションに関して、言語学、心理学、法学、脳科学など様々な学術分野の知見を融合したアプローチで分析を展開している。執筆活動においては、専門書に加えて、研究活動において得られた知見を活かして、一般書・ビジネス書・語学書を多数刊行している。

Twitter:@syugo_h

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