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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

日産ゴーン逮捕で日米英による「フランス切り捨て」加速か…マクロン大統領への報復

文=渡邉哲也/経済評論家
日産ゴーン逮捕で日米英による「フランス切り捨て」加速か…マクロン大統領への報復の画像1フランスのエマニュエル・マクロン大統領(左)とカルロス・ゴーン容疑者(右)(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 カリスマ経営者から容疑者へ――ルノー・日産自動車・三菱自動車工業の会長を兼務するカルロス・ゴーン容疑者と日産代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者の逮捕が株式市場に動揺を与えている。昨日、ルノー株は一時、前日比15%安まで急落し、日産と三菱自も夜間取引で終値の8%安まで下落した。

 周知の通り、ルノーはフランス政府が15%の株式を保有しており、そのルノーが日産に43.4%出資、日産がルノーに15%出資という構図になっている。ゴーン容疑者の逮捕を受けて、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が「フランス政府はルノーの株主として、ルノーと日産の提携関係の安定性を注意深く見守っていく」と述べるなど、国際的に余波が広がっている状況だ。

 そもそも、フランス政府が支援することで経営を立て直したルノーに対して、日産側は連合関係の見直しを求めていたが、フランス側が拒否し、政府がルノーの筆頭株主になったという経緯がある。3社連合の関係見直しが叫ばれるなか、つい先日も、アニエス・パニエルナシェ経済・財務副大臣が「フランス政府が持つルノー株を売る計画はない」と語っており、フランスとしては自国の生産拠点を拡大する意向を示していた。

 しかし、急転直下の逮捕劇で事態は大きく動いたといえる。今回の不正発覚は内部通報によるものであり、日産はすぐにプレスリリースを発表した上、西川広人社長が記者会見を開いて経緯を説明した。この流れを見る限り、今回の件は裏で相当な時間をかけて動いていたのだろう。逮捕容疑である金融商品取引法違反のほかに特別背任罪と脱税の疑いも指摘されており、有罪となれば実刑という見方も強い。

 本来、有価証券報告書の虚偽記載は日産という企業全体の責任が問われる問題でもあるが、検察当局との司法取引も取り沙汰されており、企業としての責任は限定的になるとみられる。また、これを機に連合関係の見直しが進む可能性が高く、日産は再び“日の丸資本”となるかもしれない。

フランスに反発する日米英のメリット

 そもそも、日米は「国家が企業を支援するのはフェアではない」というスタンスだ。それは日米首脳会談やアジア太平洋経済協力会議(APEC)などでも繰り返し確認されていることであり、たとえば、9月の日米首脳会談後に発表された共同声明には、以下のような文言がある。

「日米両国は、第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良く守るための協力を強化する。したがって我々は、WTO改革、電子商取引の議論を促進するとともに、知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため、日米、また日米欧三極の協力を通じて、緊密に作業していく」

 これは主に中国を想定したものではあるが、必ずしも中国のみが対象というわけではなく、フランスのルノーも該当するということだろう。政府が筆頭株主である企業が提携関係にある他国の企業を支配しようという動きは、この文言に該当するのだと思われる。

 仮に日産が日の丸資本に戻れば、欧州連合(EU)離脱の渦中で開発と生産の拠点があるイギリスとしては、「フランスよりこっちにおいで」という話がしやすいし、製造業を復権させたいアメリカにとっても同様にメリットがある。特に、マイク・ペンス副大統領の出身母体であるラストベルトにとって日本企業の誘致は必須であるため、日産と三菱自の生産工場の拡大などは願ったり叶ったりだ。また、フォード・モーターやゼネラルモーターズ(GM)も提携先を探しており、その選択肢としてもいい候補となるだろう。

 つまり、日産のリスタートを機に、日米英としてはウィンウィンの関係を構築できるわけだ。そして、その裏にはフランスへの反発がある。

米国を敵視するマクロンへの“報復”も?

 かねてマクロン大統領は、中国、ロシアに加えてアメリカを敵対視する動きを見せている。第1次世界大戦終結100年の記念式典では、ドナルド・トランプ大統領らが出席するなか、「ナショナリズムは愛国心への裏切りだ」などと自国の利益優先主義を痛烈に批判した。また、欧州独自の防衛体制と安全保障の一環として「欧州軍」の創設をうたっているが、これには北大西洋条約機構(NATO)を率いる立場のトランプ大統領が「侮辱的な話だ」と反発するなど、大きな国際問題になっている。

 そのように、アメリカを敵国扱いするマクロン大統領に対する“報復”として、今後は“フランス切り捨て”が始まると言ったら言い過ぎだろうか。

 いずれにせよ、大物経営者の逮捕という事態はショックではあるが、日本としてはチャンスにもなり得るわけだ。ルノーとの関係見直しを踏まえた財政的支援などを含め、適切な対応が待たれる。
(文=渡邉哲也/経済評論家)

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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