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三井物産、電通、TBS、味の素はどうする?

三木谷楽天社長が旗揚げした「新経連」はアンチ経団連?

文=編集部
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post_213.jpg三木谷社長、いい笑顔。
 経団連を脱会して1年。楽天の三木谷会長兼社長(47)は新たな経済団体「新経済連盟」(新経連)を6月1日に旗揚げした。これは、三木谷氏が会長を務めてきた「eビジネス推進連合会」が名称を「新経連」に変更したもの。新しい経済連盟(=経済団体)を謳っている。三木谷氏の野望は何か?

 三木谷氏は2011年6月、経団連を退会している。きっかけとなったのは、東京電力福島第1原子力発電の放射能汚染事故だ。「経団連は、(電力の)発送電分離の話がでたとたんに、それに反対し、原子力発電所の再稼働については賛成だと、早速言う。あたかも経済界の統一見解のようにそう言う。だから僕は『そんなことはないよ』と世の中にはっきり言いたかった」。これが三木谷氏の経団連脱会の弁だ。

 あれから1年。同氏は新経連について、「経団連にいきなり対抗しようとは思っていない。インターネット周辺から政策提言や政策立案に協力する。その実現に向けたロビイング活動を展開していく」と語っている。持論である医薬品のネット販売の全面解禁やネット選挙の実施を働きかけるほか、三木谷氏が主張する「電力会社の発送電分離」に取り組むことになる。

 日本のネット産業の規模は10年に23兆円に到達し、公益事業、農業、鉱業などを上回り、経済規模で9番目となった。製造業主体の経団連に風穴をあけるという狙いがあることは明らかだ。

 しかし、新経連をネット業界全体が支持しているわけではない。「会員の中でロビイング活動に消極的だった(一部の)企業は脱会した」(三木谷氏)。具体的な社名を挙げていないが、ソフトバンクグループのヤフーを指していることは明白だ。ソフトバンクの孫正義社長(54)は「脱経団連」を示唆しているものの、新経連とも距離を置いている。

 そもそも10年2月22日、三木谷氏が呼び掛け人となり、初めての業界団体「eビジネス推進連合会」が発足した。会長はネット通販サイト最大手である楽天の三木谷氏、副会長はネット検索最大手、ヤフー社長(当時)の井上雅博氏(55)、幹事はネット広告大手、サイバーエージェント社長の藤田晋氏(39)。238社の一般会員(議決権あり)と、1427社の賛助会員(議決権なし)の計1665社で構成されていた。

 三木谷氏は「諸外国はネットを利用して成長していこうとしているが、日本は逆に制約をかけていく方向にある。過剰な規制は社会経済の効率性を歪める」と設立の趣旨を説明した。

 だが、3本柱の一角を占めていたヤフーが、これから退会。新経連は、代表理事が三木谷氏、理事にはサイバーエージェントCEO(最高経営責任者)の藤田氏、フューチャーアーキテクトCEOの金丸恭文氏(58)、GMOインターネット会長兼社長の熊谷正寿氏(48)、ライフネット生命保険副社長の岩瀬大輔氏(36)の4氏が就いた。

 新団体になり、会員数は779社に半減、一般会員は244社と微増だが、賛助会員は546社に激減した。一方で、ネット企業で勢いのあるDeNA、グリー、グーグルなどは会員であり、さらに三井物産、富士通、電通、味の素、TBS、近畿日本ツーリストの名前もあるが、新経連が明らかにアンチ経団連となると微妙な立場になる。三井物産は経団連の副会長を出してきた会社だし、味の素は現在、審議員会副議長。賛助会員の三菱東京UFJ銀行は現在、経団連の副会長を出している。経団連に加盟している主要企業は、新経連への加盟を続けるか、それとも脱会するのかの選択を迫られることになる。

 一介のベンチャー企業にすぎなかった楽天が、短期間で一流企業の仲間入りができたのは、経団連人脈のバックアップがあったればこそだ。楽天が経団連に加入したのは04年11月。経団連会長でトヨタ自動車会長だった奥田碩氏(現国際協力銀行総裁)の推薦による。

 奥田氏は三木谷氏の一橋大学の先輩だ。04年に設立したプロ野球球団「東北楽天ゴールデンイーグルス」の運営会社、楽天野球団の経営諮問委員でもあった。諮問委員には、齋藤宏氏(みずほコーポレート銀行頭取)、西川善文氏(三井住友銀行頭取)、岡部敬一郎氏(コスモ石油会長)、大橋洋治氏(全日本空輸会長)、牛尾治朗氏(ウシオ電機会長)など財界の重鎮が名を連ねた(肩書きは当時のもの)。

 三木谷氏が、あのホリエモンこと堀江貴文・ライブドア元社長(39)ほど大衆受けしないのは、財界の大物にすり寄る姿勢があまりに露骨だったからだ。

 三木谷氏と堀江氏。2人はM&A(買収)の夢舞台のスーパースターだった。テレビ局の経営権の争奪戦やプロ野球団のM&Aで張り合い、お茶の間を賑わせた。楽天がプロ野球に新規参入するとき、経団連の会員になっていたことがプラスに働いた。「どこの馬の骨かわからないホリエモンはダメだが、経団連会員企業なら反対する理由はない」という暴論がまかり通った。宿命のライバルと呼ばれた2人は、何から何まで対照的だった。

「三木谷はネット界の白鵬である」という説がある。朝青龍は誰かというと、いうまでもなく堀江氏だ。相撲界の仕来りを次々と踏みにじり、「横綱の品格」を厳しく問われた朝青龍は角界を石もて追われたが、今でも人気は高い。大人の神経を逆なでする言動でひんしゅくを買い、今や塀の内側にいてメールマガジンで近況報告などを書いている堀江氏が、ずっとホリエモンの愛称で呼ばれているのとピタリと重なる。

 三木谷氏は現代のヒーローにふさわしいステイタスを得ながら、大衆受けしないところは大横綱の白鵬にそっくりだ。

 ホリエモンが新経済団体を旗揚げしたのであれば、「大阪維新の会」を立ち上げた橋下徹・大阪市長のようにフィーバーを巻き起こしたかもしれない。だが、三木谷氏の新経連に強烈な社会的インパクトを期待するのには無理がある。

 三木谷氏は創業以来、後ろ盾になってくれてきた財界の大物たちと、今では疎遠だ。付き合っているのは一橋大学の大先輩の石原慎太郎・東京都知事ぐらいだろう。元経団連会長の奥田碩氏や元住友銀行頭取の西川善文氏らは、利用価値がなくなったので遠ざかったのだろう。

 IT産業が日本の経済&産業界の主導権を握るという三木谷氏の野望は、果たして実現するのだろうか。道程は決して平坦ではない。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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