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垣田達哉「もうダマされない」(4月23日)

機能性表示食品、健康被害多発の危険 事前審査なく事業者まかせ、嘘つき商品氾濫の恐れ

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
機能性表示食品、健康被害多発の危険 事前審査なく事業者まかせ、嘘つき商品氾濫の恐れの画像1「Thinkstock」より

 4月1日から、食品機能性表示制度がスタートした。山口俊一内閣府特命担当大臣は4月7日の記者会見で、機能性表示食品の届出について「4月6日15時時点で八十数件」と明らかにした。

 いわゆる「一番乗り効果」を狙った企業が80社ほどあることになる。実際は1社で複数の商品を届け出ているケースもあると思われるため、80社以下かもしれないが、山口大臣も「期待が高い」と語るように、食品業界では機能性表示食品のミニフィーバーが起きているといえる。

 4月16日時点での届出は、加工食品42件、サプリメント62件だ。形式審査後に受理され、内容が消費者庁のホームページに公開されたものは加工食品2件、サプリメント6件となった。今後も次々に受理され、公開されるだろう。

 新制度に一番乗りすることで、宣伝効果は絶大だろう。しかし、例えば「一度に50商品が機能性表示食品になった」となると、マスコミも全商品を同時に取り上げるわけにはいかない。消費者も、店頭に機能性表示食品が多く並べば、どれを選べばいいのかわからなくなる。特定保健用食品(トクホ)のように、商品の数が限られているほうが選びやすいだろう。

 事業者としては「黙って見過ごすことはできない」「他社に取られてなるものか」という心理が働き、届出ラッシュになった機能性表示食品。しかし、実は消費者はおろか、事業者にとっても、リスキーな商品になる可能性がある。

「事前審査なし」の危うさ

 トクホと違い、機能性表示食品には事前審査がなく、届出だけで効果を表示できる。そのため、事業者としては開発費用を抑え、開発から販売までの期間を短縮することができる。早く、安く、商品開発を行うことができるわけだ。

 しかし、消費者庁は「事後監視は行う」と表明している。仮に事後のチェックで落ちてしまえば、企業イメージは著しく損なわれるだろう。「事前に審査をしてくれたほうがよかった」と嘆いても、後の祭りである。届出制の機能性表示制度は「事業者性善説」に基づいた制度であり、不正などは事業者を信頼していた消費者だけでなく、国にとっても許せない行為となる。

 また、消費者庁は、届出のあった機能性表示食品の「形式的な審査は事前に行う」としている。書類上の不備や「NGワード」などをチェックするということだが、何が不備に当たるのか、NGワードにはどんなものがあるのか、はっきりとしていない。

 安全性や効果の科学的根拠、表示可能な言葉などについて、事前に細かくチェックされるのであれば、事業者側も安心だろう。しかし、販売後に消費者や専門家から問題を指摘され、「消費者庁は、そこまでチェックしていない」となると、事業者のリスクは大きくなる。

 加えて事後監視も、いつ、どの程度行われるのか不明だ。事業者にとって最もリスキーなのは、安全性の確保と効果の科学的根拠をどのくらい厳しくチェックするかの判断基準が示されていないことである。

 例えば、国立健康・栄養研究所が運営するウェブサイト『「健康食品」の安全性・有効性情報』にどの程度従うか、ということも大事だ。同サイトでは、「コラーゲンを食べても『美肌』『関節』に期待する効果が出るかどうかは不明です」としている。同研究所の考え方は、いわば国の指針といえる。仮にコラーゲン入りの機能性表示食品が販売された時に、消費者庁がどう解釈するのか、現時点で不明だ。

 3月13日付当サイト記事『消費者庁、消費者より大企業を優先する“歪んだ配慮” 景品表示法違反摘発急増の怪』でも述べたが、消費者庁は最近、虫よけや空間除菌商品などの多くが、景品表示法違反(優良誤認=不当表示)に当たるとして、摘発している。「一般商品には厳しく、機能性表示食品には甘い」ということは許されないだろう。そのため、事業者によっては、事前審査のないことが逆にリスクとなる可能性がある。

機能性表示の自由度も不明

 国が基準を定めている健康食品には、トクホと栄養機能食品がある。国の審査に合格したトクホは「おなかの調子を整える」といった、決められた保健の用途(効能・効果)を表示することができる。栄養機能食品は「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です」「ナイアシンは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です」といった表示ができる。ただし、注意喚起の表示も必須だ。

 機能性表示食品は審査がないことは前述したが、トクホと同じように「目の健康に役立ちます」「おなかの調子を整えます」というように、身体の部位を明記して機能を表示することができる。ただし「高血圧の人に」「脳卒中を予防」「近視がよくなる」といった「治療」「予防」「診断」を連想させる表示や、「美白」「増毛」のような意図的な健康の増進、科学的根拠に基づいていない機能に関する表示は禁止されている。

 トクホと医薬品を混同している人もいるが、トクホと同様の表示ができるということは、より医薬品に近づくことにもなる。事前審査も行われずに薬のような印象を与える表示が氾濫することは、消費者、事業者、国にとって、必ずしもいいこととはいえない。

 機能性表示食品に頼る消費者が増え、市販の薬の売り上げが落ちれば、医薬品業界は黙っていないだろう。仮に病気になる人が増えれば、医療費が増え、国の負担も大きくなる。そうなると、機能性表示制度は成長戦略どころではなくなってしまう。“薬もどき”の商品を大量に市場に流通させることは、誰の得にもならないのだ。

 薬のような誤解を与える表示は、薬事法や景品表示法などで規制されているが、薬事法には「他の制度で守られた商品には言及しない」という慣例がある。そのいい例がトクホだ。トクホには「脂肪の吸収を抑える」といった薬の効能効果のような表示が許されているが、薬事法を所管する厚生労働省は、食品表示法を所管する消費者庁に文句が言えない。

 そんな状況で、食品表示法による機能性表示制度が登場した。同制度で届出、販売された商品に、厚労省は手が出せない。もちろん、あまりに弊害が大きくなれば黙っていないと思われるが、しばらくは静観の構えだろう。

 そうなると、トクホでも機能性表示食品でもない健康食品が目の敵にされる可能性がある。また、国だけでなく、消費者も機能性表示食品に頼って、他の健康食品には見向きもしない、ということが起きるかもしれない。「機能性表示食品として届出をすれば、薬事法から守られ、消費者にも支持される」ということになれば、「機能性表示食品にしないと損だ」と考える事業者が増える可能性もある。

 実際、100件以上の届出の中に生鮮食品は1件もない。前述のとおりサプリメントが半数以上で、加工食品の多くもいわゆる健康食品に分類されるものが多いだろう。

中小企業にはハードルが高い機能性表示制度

 当初、この制度の最大の効果は、トクホより簡単かつ費用負担が少ないため、中小企業や生鮮食品の生産者も容易に参入できることだと思われていた。ただ、実際はそうでもないようだ。

 消費者庁に届出をする際、安全性の確保と機能を証明するための科学的根拠などを記した書類が必要だが、安全性の確保には食経験の評価や、HACCP(ハサップ)など高度な品質管理の実施が条件で、科学的根拠には臨床試験を行うか、世界中の文献を精査しなければならない。科学の素養がある専門スタッフがいない中小企業には、あまりにもハードルが高いといえる。外注すれば、その費用は計り知れない。これは生鮮食品も同様だが、生産者だけでは提出書類を書くことすらできないだろう。

 しかも、機能性表示食品だけに義務づけられた表示が16項目もある。小さな商品の場合、義務表示だけでパッケージが埋まってしまいそうだ。

信頼性が失われれば、制度は崩壊する

 機能性表示食品が売れ、他の商品も今まで通り売れるということは考えにくい。景気は上向きのように見えるが、消費状況は決してよくないからだ。消費者は、機能性表示食品を買う代わりに、他の何かを買わなくなるだろう。では、影響が出るのはどこだろうか。

 機能性表示食品は、店頭販売より通信販売での比率が高くなりそうだが、当初は小売店にも多く並ぶはずだ。そうなると、店側は何かを減らして機能性表示食品を陳列することになる。この判断も難しいところで、場合によっては大量の在庫を抱え、本来売るべき商品を売れなくなりかねない。

 スーパーマーケットやコンビニエンスストアの店頭では、スペースの都合上、機能性表示食品を多く並べることはできない。次々と登場する機能性表示食品をどれくらい仕入れればいいのか、小売店側は頭を悩ますだろう。

 事業者が届け出た機能性表示食品の情報は、一部が消費者に公開されるが、その内容が信頼できるものかどうかはわらかない。前述のとおり、国による事前審査がないからだ。公開されるものの内容についてはほぼ不問ということであれば、アメリカのように事業者のやりたい放題で「嘘つき商品」が氾濫し、健康被害が多発する可能性もある。

 機能性表示食品に対する信頼性が失われれば、当然ながら消費者から敬遠されるようになるだろう。たとえ事業者側が「うちの商品は大丈夫です」とアナウンスしても、ひとつ「嘘つき商品」が出てしまえば、どの機能性表示食品も信用されなくなる。まさに「事業者性善説」が通用するかどうかが、この制度の鍵なのだ。

 事後監視で届出が却下される商品がひとつでも出れば、消費者庁はチェックする商品を増やさなければならなくなる。消費者からは、「全部チェックしてほしい」という声が上がり、やがて事前審査の必要性が叫ばれるようになるだろう。機能性表示制度で事業者が一番気にするべきなのは、自社よりも他社の動向なのかもしれない。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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