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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

低所得者層の増大と格差拡大は、今後さらに加速する 生活必需品の物価上昇が続く背景

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト

 最近の国内物価は全体としてはデフレ脱却傾向にあるものの、新興国の台頭により嗜好品の価格と生活必需品価格の二極化が生じている。具体的には、購入頻度が低い工業製品等は価格が上がりにくい一方で、食料やエネルギーといった日常的に購入する品目は、新興国の台頭やマネーのグローバル化などで価格が上がりやすい状況にある。そして、こうした物価のばらつきは、生活必需品の価格上昇によって、生活水準の二極化現象に拍車をかけてきた。

 足元の消費者物価指数は伸びが鈍化している。しかし、食品等の値上げが相次いでいる割に物価上昇は緩やかに見える。そこで、消費者物価指数を生活必需品(食料、持ち家の帰属家賃を除く家賃、光熱水道、被服履物、交通、保健医療)と嗜好品(生活必需品以外)に分けて物価水準を比較してみると、嗜好品の価格上昇が限定的である一方で、生活必需品の価格は嗜好品と比べて明らかに上昇基調にあることがわかる。

 特に生活必需品の中では、光熱水道と食料が上昇している。一方、薄型テレビやゲーム機、パソコン、デジカメといった嗜好品の価格上昇は限定的、つまり嗜好品価格の弱含みによって生活必需品の値上がりを緩和しているのが、近年の物価動向の実態だ。

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 このように、国内物価は食料やエネルギーが大きく変動してきたのに対し、それ以外の物価は上昇が限定的であり、これらについては新興国の台頭が影響している。なぜなら、新興国の需要急増が生活必需品の価格を押し上げる一方で、新興国企業の市場参入による競争激化が嗜好品の価格を抑制しているためである。

 またサービス価格も、新興国の労働力との競争激化による国内の賃金伸び悩みが影響してきた。そして、こうした国内で十分供給できない輸入品の価格上昇で説明できる物価上昇は、「悪い物価上昇」といえる。

「良い物価上昇」と「悪い物価上昇」

 そもそも、物価上昇には「良い物価上昇」と「悪い物価上昇」がある。「良い物価上昇」とは、国内需要の拡大によって物価が上昇し、これが企業収益の増加を通じて賃金の上昇をもたらし、さらに国内需要が拡大するという好循環を生み出す。

 しかし、2006年以降の物価上昇や10年以降の物価下落率の縮小は、輸入原材料価格の高騰を原因とした値上げによりもたらされ、国内需要の拡大を伴わない物価上昇により、家計は節約を通じて国内需要を一段と萎縮させた。その結果、企業の売り上げが減少して景気を悪化させたことからすれば、「悪い物価上昇」以外の何物でもない。

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
第一生命経済研究所の公式サイトより

Twitter:@zubizac

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