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東芝を脅かす巨額損害賠償請求 株主は確実に勝てる?認められない可能性も?

構成=関田真也/フリーライター・エディター
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 この場合、

・(虚偽記載公表直前の株価×保有株式数)-処分した金額

が基本の損害額となる。また、保有している場合は

・(虚偽記載公表直前の株価×保有株式数)-訴訟終結時の評価額

となる。

「具体的には、東芝が最初に不適切会計問題の発表を行った今年4月3日の前日(4月2日)の終値512.6円が基準になると主張していくことになるでしょう。つまり、株主が東芝問題を受けて、512.6円を下回る金額で株式を処分した場合には、その差額が基本の損害賠償額になります。一方、東芝株式をまだ保有している場合でも訴訟は提起できますが、訴訟が終結した際の株価が現時点では不明のため、今後東芝株価が512.6円を上回った場合には、損害は認められないことに注意が必要です」(同)

 ただし、この取得自体損害はすべての株主に認められるわけではないという。これを裁判所が認めるためには、「虚偽記載を行うような会社の株式など、絶対に購入するわけがない」ということを原告が裁判上証明することが必要だ。個人から資金を預かっていて運用することを使命とする機関投資家であれば、投資家に対して損害を負わせないようにする義務を負っているため、「虚偽記載を行う会社の株など購入しない」ということを証明することは比較的容易になる。しかし、個人の場合はさまざまな投資方針があり得るため、証明は難しい。

「東芝問題を知った後、すぐに全株式を売却しているような場合には、取得自体に損害が認められる可能性は高いでしょう。しかし、問題の発覚後も、損害を薄めるために新たに株式を購入する、いわゆる『ナンピン買い』をしていると、どのような状況であっても東芝株を購入したことが推認できるため、取得自体に損害が認められない可能性が高くなってしまいます」(同)

 ただ、こうした事実があっても損害を認めさせるルートが金融商品取引法によって用意されているという。同法には、最低限の損害額を認めさせる保険のような仕組み(損害推定)があり、これによって、株主の全敗という事態はほぼ考えられないようだ。「東芝株について自分がどういう状況にあるのかを含めて、一度専門家に相談してほしい」と藤武弁護士は語る。

 そして、実際に訴訟を提起するメリットがあるかは、保有している株式数によることになる。ある程度の数の株式を保有していれば、弁護士費用や裁判費用を払ってもプラスが出る。勝訴の可能性が高い場合、着手金をなくして成功報酬のみで請け負ってくれる弁護士も少なくない。東芝が倒産することは考えにくいため、回収も困難とはならないだろう。有価証券報告書の虚偽記載は、投資家を欺く悪質な行為だ。訴訟を使って、個人株主が侵害された権利を回復する道筋は整っている。
(構成=関田真也/フリーライター・エディター)

【取材協力】
弁護士 藤武寛之

弁護士法人クレア法律事務所(東京弁護士会所属)。
金融法務を中心に企業に対する法的支援を行う。有価証券報告書の虚偽記載に基づく損害賠償請求訴訟では、機関投資家側の訴訟代理人も務める。

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