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最盛期の60年は5300人が暮らし、人口密度は東京の9倍。74年に閉山して、無人島となり廃墟と化した。三菱マテリアルが所有していたが、01年に高島町(現・長崎市)に無償譲渡された。観光資源にしようと長崎市が見学通路などを整備し、上陸禁止を解除。09年には一部に限って上陸できるようになった。軍艦島は廃墟ファンには知られていたが、産業革命遺産に登録後、各テレビ局が競って放映したため知名度は全国区になった。
長崎県と長崎市が軍艦島の世界登録遺産に難色を示したのは、「現状維持」が義務づけられているからだ。軍艦島のような全体が老朽化する構造物の保存措置をどこまでやればいいのかについて基準はない。
長崎市は国内最古の鉄筋コンクリートの高層アパートについて、現在の技術では保存するのが困難と判断している。維持可能とされる居住地域を復元するには、専門委員会の調査で144億円の費用がかかる。さらに保存のための維持費用負担も発生する。市が負担できる額ではないため、長崎市は軍艦島の世界登録遺産には反対だった。
鹿児島県を除く他の自治体も同様で、観光客集めの効果が期待できないからだ。初年度は話題性から観光客が来ても、古い生産設備ではリピーターを呼び込めない。2年目からは来訪者が急減することを懸念している。
結局、文化庁は16年の世界文化遺産登録候補に「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を推薦した。
女人禁制の島
17年の世界文化遺産の国内候補に「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)が選ばれた。「海の正倉院」と呼ばれる沖ノ島は、古代からのしきたりが今に残る。島に入るときは、浜で衣服を脱ぎ、首まで海につかり、みそぎをしなければならない。冬でも、このしきたりが守られている。島内で見聞きしたことは漏らしてはいけないし、一木一草も持ち帰ることは許されない。
日本で、古代の禁忌が今なお守られている唯一の島で、女人禁制で女性が島に入ることは禁じられている。そのため、沖ノ島の登録は産業革命遺産の時よりも、さらに大きな物議を醸すことも予想されている。
(文=編集部)
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