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片山修「ずたぶくろ経営論」

奇跡づくしで常識破壊、ホンダジェットが離陸…利益ゼロで30年間開発続行の死闘

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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「床は、オイルが落ちているとか、ボルトが転がっているとかがすぐわかるように、常にキレイにするようにしています」

 よく知られることだが、ホンダ創業者の本田宗一郎は、「整理整頓の行き届かない工場からは、優れた製品は生まれない」として、工場の整理整頓や掃除を徹底した。そして、作業着は、汚れがわかるように「白」と決めた。ホンダエアクラフト社の真っ白な工場は、この宗一郎の思想に通じる。ホンダの四輪・二輪の工場の作業員は皆、真っ白の作業着を身に付けている。そして、ホンダエアクラフト社の従業員も全員、白い作業着を着ているのはいうまでもない。

 続いて、顧客に飛行機を引き渡す「デリバリーセンター」に向かった。デリバリーセンターは、450万ドル(約5億4000万円)を支払って「ホンダジェット」を購入した顧客が、自らの飛行機と初対面する場である。

「新しい飛行機の引き渡しは、その人の人生にとって、おそらく一度か二度しかないことです。デリバリーセンターは、できるだけ、スペシャルな体験を演出できるように、というコンセプトでつくっています」

 デリバリーセンターに入ると、真ん中のターンテーブルに、ピカピカのホンダジェットが載せられている。購入者は、その機体を、ガラス張りのエレベーターに乗って上から眺めることができる。

「デリバリーセンターをデザインするときには、どうしたらもっとも機体の見栄えがするか、たとえば壁のパネルの大きさや色までこだわって設計しました」

 しかし、最新の機器が揃った工場やR&Dセンターの研究設備、豪華なデリバリーセンターをつくった理由は、顧客をもてなすためだけではない。

「会社をつくるには、まずチームメンバーが必要です。人材をリクルートし、社屋や工場を設計してつくり、飛行機を開発認定するための試験設備も整えないといけない。企業の全体基盤をつくることは、飛行機自体の設計や認定を得るのと同じくらい大変な仕事で、非常に重要なことだと思います」
 
 なかでも難しかったのが、優秀な人材の確保だった。

「日本なら、たとえば『ホンダ』といえば、今ならそれなりの人がきてくれると思います。でも、航空機産業の本場米国で、日本のホンダが、実績のない航空機ビジネスに参入するといっても、なかなか優秀な人材は集まってはくれなかったです」

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