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JASRAC、「楽器売って儲けているから著作権料払え」に音楽教室「守る会」が「心外」と反論…対立先鋭化

文=深笛義也/ライター
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「楽器を売っているから著作権料支払え」の暴論

 また、玉井氏は「教室に来るお客さんにピアノやオルガンを売って儲けても音楽そのものには何も払わん、なんていう商法が通るのがおかしい」とも発言している。浅石道夫理事長も日本経済新聞のインタビューで、学校法人からは徴収せずにヤマハや河合の音楽教室から徴収する理由として、楽器を売っていることを上げている。

「音楽教室が楽器販促のビジネスモデルであるという発言については、心外だと思っています。そんなことは決してなく、順番が逆です。購入していただいた楽器の楽しみ方を学んでいただく目的で始めたものです。音楽を習って、結果として音楽が好きになって自分の楽器を持ちたいと思うのが自然な流れです。楽器を売るための音楽教室ではありません」(同)

 そもそも、楽器を売っていることが著作権法第22条にどうかかわってくるのか。楽器を売っているから著作権料を取るというのは、極めて奇異な論理だ。また、ピアノの教室というと、ハノンやバイエルから始まり、クラシックへ進んでいくというイメージがあるが、JASRACに信託された曲はどれくらい使われているのだろうか。

 ヤマハ音楽教室では、ヤマハ音楽教室で学んだ子どもがでつくった曲を採用していることもあり、それもJASRACに信託している。そのため、発表会でヤマハの曲を演奏する時にも著作権料を支払っている。子供向けの教室では、ヤマハ曲と、著作権が消滅してパブリックドメインとなったクラシックが9割を占め、大人向けの教室では比較的JASRACに信託された曲も多く使用しているという。

 JASRACが音楽教室から著作権料の徴収を行うようになると、選曲に変化が生じることが予想される。

「パブリックドメインとなった曲だけで教えようと考える事業者も、当然出てくるでしょう。そうすると、テキストやCDもそうなるわけですから、それまで作家に分配されていた部分もなくなってしまいます」

 音楽教育を守る会では、民事訴訟も視野に入れているという。

「JASRACが実際に徴収に向けて動き始めたら、我々はそんな債務は負っていないということで、債務不存在確認の訴訟を行うことも考えています。ただし、司法の判断を仰ぐのは、あくまでも最終手段です。今は『音楽教育を守る会』への参加者を募っています。現在は約200社から申し込みがあり、作家や音楽大学の教授などからも賛同を得ています」

 JASRACの方針には、音楽界の外からも異議の声が上がっている。新潟県弁護士会は2月6日、菊池弘之会長の談話を発表した。

 法律家としての立場から、詳細にJASRACの方針を分析した上で、以下のような見解を述べている。

「本件方針は、先人たちが『無償』で著作物を利用・活用できたことによって新たな楽曲等を制作し、生徒やリスナーの購入意欲等を高め、音楽文化を発展させてきた歴史や経緯に反するものであるとともに、日本の将来の音楽及び新たな著作物の制作・発展を阻害する危険を秘めているものであることを認識され、バランスのとれた制度構築をされるよう希望するものです」

 談話の結語では、JASRACに方針の撤回を求めている。

まっこうから対立するJASRAC

 一方、JASRACは2月27日、「楽器教室における演奏等の管理開始について」と題し、同協会側の見解をホームページ上で公開した。

「なぜ、このタイミングでの管理開始なのか」との問いに対して「同じ音楽教室でありながらカルチャーセンターで行う楽器教室や歌謡教室については使用料をお支払いいただいている一方、楽器教室のみがお支払いをいただけていないというのが現在の状況です。既に使用料のお支払いをいただいている各種教室の事業者との間の公平性を確保する観点からも、これ以上、楽器教室の使用料徴収の開始を遅らせることはできないと考えております」と回答している。

 音楽教室側が主張する「『公の演奏』に当たらず、演奏権が及ばないのではないか」との疑問には、「営利事業である音楽教室での音楽著作物の演奏利用には演奏権が及ぶ」「楽器教室における音楽著作物の利用は不特定の顧客(受講者)に対するものであるから、公の演奏に当たる」との見解を示している。

 また、新潟弁護士会などから示された「楽器教室からの使用料徴収は音楽文化の衰退につながるのではないか」との指摘には、「著作権は、新たな文化を生み出すために欠かせない『創造のサイクル』を維持するために認められている権利なのです。楽器教室が、この『創造のサイクル』に加わっていただくことこそが、新たな作品の創造につながり、著作権法の趣旨である音楽文化の発展に寄与するものと考えております」と理解を求めている。

 このように、互いの主張は現時点でまったくかみ合っていない。本当の意味で「文化の発展に寄与する」ために、音楽教室が社会の中でどのように運営されていくべきなのか、大局的な判断が求められている。
(文=深笛義也/ライター)

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