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米国、日本に力ずくで輸入拡大措置か…

文=斎藤満/エコノミスト
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力ずくで市場をこじ開けてくる米国の貿易交渉

 米国が仕掛ける貿易戦争はいくつかの波動を伴い、直線的には進まないことに留意が必要だ。たとえば、「中国向けに知的財産権侵害への報復関税をかける」と言っているが、中国が米朝首脳会談に協力すれば、発動をしばし保留する余地はある。アメとムチを使い分けるのだ。

 もうひとつが、貿易戦争を仕掛けても米国の貿易赤字は簡単には減らないため、結果的に相手国への輸入制限など、世界貿易の縮小につながるリスクが大きいことだ。その原因は、米国企業にキャパシティがないことにある。すでに失業率は4.1%まで低下し、人材確保が困難で生産拡大や輸出拡大の余地がない。そもそも、現在の巨大な貿易赤字は国内生産が追いつかないほど需要が強すぎることが要因だ。

 そこへ、さらに米国車を増産して中国や日本、欧州連合(EU)に売ろうとしても、供給余力がないため生産が追いつかない。だから、今後2国間のFTAで圧力をかけても、米国車の輸出がどれほど増えるのかは疑問が大きい。ほかの製品も同様だ。米国の生産や輸出が拡大して拡大均衡のかたちとなれば、世界経済にも悪くない。しかし、米国の輸出が増えなければ、相手国からの輸入制限に傾く。

 つまり、中国製品などの対米輸出には高率関税がかけられて輸出が減り、日本では、かつてのような業界による輸出の自主規制がなされる可能性もある。それでも米国の赤字が減らなければ、強引に市場をこじ開けてくる可能性がある。特に不均衡が大きい中国との間では、中国の金融機関への資本参加や実質的買収が進み、金融自由化を進めさせて不良債権処理や“ハゲタカ買い”を仕掛ける可能性がある。かつて、日本がされたように。

 現在の日米関係は、昨年までの「シンゾー」「ドナルド」と呼び合う関係から急速に冷え込んでいる。北朝鮮問題では、安倍晋三首相の強硬路線を米国のヘンリー・キッシンジャー元国務長官などが煙たく思い、日本は蚊帳の外に置かれている。鉄鋼、アルミへの高関税政策についても、日本は除外してもらえなかった。トランプ大統領は「日本が米国を利用する時代は終わった」と言っている。日本が嫌がるFTAで、力ずくの輸入拡大措置をとる構えだ。

 特に、コメを含めた農産物の関税引き下げ、自動車の非関税障壁撤廃、遺伝子組み換え種子の受け入れ、などを迫るだろう。さらに、足りない分はF15戦闘機やミサイル、イージス艦の購入に回され、そのための防衛予算拡大も迫っている。また、為替の円安是正を迫られる可能性もある。

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