日本マクドナルドホールディングスの業績が急速に回復しています。2017年12月期連結決算では、上場来最高の197億円もの経常利益を上げました。さらに、18年12月期は10%増の同217億円を見込んでおり、まさに「外食産業の王者」たる立場を不動のものにしています。
そんなマクドナルドの商品についてインターネット上でたびたび話題になっているのが、健康への影響です。ファストフードは軒並み、健康に悪いものというイメージがありますが、特にマクドナルドの商品はよく槍玉に上がります。「添加物が多い」「原材料があやしい」「危険な物質を混ぜた肉を使っている」「発がん性物質を含む油を使っている」といった指摘が、まことしやかに語られてきました。
実際にそういった指摘が正しいと立証された事例もありますが、マクドナルドは原料や使用する油などを改良し、さらにHP上で原料・製造工程を公開することで、消費者の不安払拭に努めてきました。そういった努力が客足の回復につながった面も少なからずあるでしょう。
とはいえ、マクドナルドでの食事が健康的といえるかどうかは別問題です。たとえば、最近話題になっているのは、人気商品のひとつ「マックフライポテト」(以下、「ポテト」とします)です。
塩分過多になる恐れ
「ポテト」のLサイズは170gでカロリーは534kcalにもなり、定番商品の「ビッグマック」(530kcal)を上回るほどです。成人男性の一日の必要摂取カロリーが1800~2200kcalですから、「ポテト」だけでその4分の1に達します。バーガー類とポテト、ドリンクのセットでは軽く1000kcalを超えます。たとえば、ランチでマクドナルドのセットメニューを食べた場合、夕食はカロリーを抑え目にするなどの調整は必要でしょう。
また、一部には「ポテトも野菜なのだから、体に良いはず」といった意見もあるようですので、栄養成分を確認してみましょう。マクドナルドのHPによると、「ポテトLサイズ」は以下となっています。
・たんぱく質:6.6g、脂質:27.7g、炭水化物:64.8g、食塩相当量:1.5g、ナトリウム:584mg、カリウム:1196mg、カルシウム:27mg、リン:236mg、鉄:1.4mg、ビタミンA:0μg、ビタミンB1:0.27mg、ビタミンB2:0.03mg、ナイアシン:4.9mg、ビタミンC:46mg、コレステロール:9mg、食物繊維:6.3g
こうして見てみると、ビタミンやミネラルの類は少なく、「体に良い」といえるような要素はほとんどありません。
逆に、気になるのが塩分と脂質の多さです。厚生労働省は生活習慣病予防の観点から、食塩摂取量の目標値について、成人男性は1日当たり8.0 g未満、成人女性で同7.0 g未満としています。また、日本高血圧学会減塩委員会は、高血圧予防のためには同6.0 g未満が望ましいとしています。
ところが、世界保健機関(WHO)では、5.0 g未満を推奨しているのです。仮に、ポテトLサイズ」(1.5g)と「ビッグマック」(3.4g)を併せて食べると、それだけでWHOが推奨する1日の塩分摂取量に達してしまうのです。ちなみに、マクドナルドでもっとも塩分量の多い商品は「倍ダブルチーズバーガー」で5.4gです。外食をすると、塩分過多になる恐れがあるといわれるのがよくわかります。
さらに、若い人の間で行われている「オプション」で気になることがあります。実は、マクドナルドでは「塩多め」と頼むことができるのですが、それをすると尋常ではないほど大量の塩を別の袋に入れて提供してくれます。特に揚げてから時間が経った「ポテト」は塩がなじんで味が薄くなってしまうため、塩を追加して食べる人が少なからずいるようです。そうなると、健康に危害を与える可能性が高まるほどの塩分量になる恐れがあります。
また、脂質については、一日の必要摂取量は成人男性で55gほどですので、「ポテトLサイズ」の27.7gは、それだけで半分満たしてしまいます。総エネルギーの20~30%を脂質から摂取するのが理想とされています。脂質は1g当たり、体内で9kcalになるといわれているため、27.7グラムの脂質を摂取すると体内で249.3kcalになる計算です。「ポテト」のエネルギー量534kcalに照らしてみると、約47%に達し、やや脂質過多の食品といえます。
アクリルアミドとトランス脂肪酸
もうひとつ気になるのは、発がん性が指摘されているアクリルアミドとトランス脂肪酸の問題です。アクリルアミドの発生は、原材料に含まれているある特定のアミノ酸と糖類が、揚げる、焼く、焙るなどの高温での加熱(120℃以上)により化学反応を起こすためと考えられています。マクドナルドのポテトは、一度揚げた状態で冷凍してから各店舗に配送され、そこでもう一度揚げてからお客に提供されるため、アクリルアミドが生成されるタイミングが2度あることになります。
しかし、マクドナルドが公表している「ポテト」の製造工程によると、揚げる前に一度お湯にくぐらせているようです。その目的は余分な水分と糖を除去し「ホクホク感を出すため」としていますが、実は最近、お湯をくぐらせるとアクリルアミドの発生が軽減されるとの研究結果も出ているので、マクドナルドにとっては朗報といえるでしょう。
他方、トランス脂肪酸についてはどうでしょうか。マクドナルドが公表しているところでは、「ポテト」に使う揚げ油は「牛脂とパーム油のブレンド」となっています。パーム油について農水省は、「トランス脂肪酸は低減できますが、すでに平均的にみてとりすぎの傾向にある飽和脂肪酸の含有量を大幅に増加させてしまう可能性」があると指摘し、さらに米国農務省(USDA)は、食品事業者にとってパーム油はトランス脂肪酸の健康的な代替油脂にはならない」とする研究報告を公表しています(農水省HPより)。
こうして見てみると、マクドナルドのポテトをたまに食べたくらいでは、健康に害が生じるようなことはないと考えられますが、常食するのは避けるべきといえるでしょう。
4月18日には、全国のマクドナルド店舗で239gの「グランドフライ」が発売となりました。塩分、脂質、アクリルアミドなど、当然、Lサイズよりは健康リスクの高い商品といえるでしょう。
(文=豊田美里/管理栄養士、フードコーディネーター)