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ツタヤ図書館騒動、市営プールで女児死亡…公共施設の民間委託が実質破綻、逆の動きも

文=小川裕夫/フリーランスライター
ツタヤ図書館騒動、市営プールで女児死亡…公共施設の民間委託が実質破綻、逆の動きもの画像1「Gettyimages」より

 一時期、レンタルショップチェーンのツタヤで知られるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営する図書館が話題を呼んでいた。大量の古本購入で経費を浮かせる“ツタヤ図書館”の手法は批判を呼んだが、以降も公立図書館の運営を民間企業に委託する指定管理者制度の広まりは止まらない。

 この制度は図書館だけに導入されるものではない。体育館や公民館など、公共施設に広く導入されている。地方自治法を一部改正することで可能になった運用方法だが、2003年に小泉純一郎内閣が成立させた。公共施設の計画・建設などは自治体が担い、運営は民間企業が担うという“いいとこどり”を目指した。運営を民間に委託することで市場原理が働き、経費削減や経営の効率向上が期待された。

 しかし、実際に蓋を開けてみると結果は逆に動いた。06年、埼玉県ふじみ野市の市営プールで小学2年生の女児が吸水口のパイプに吸い込まれて死亡するという痛ましい事故が発生。この市営プールは指定管理者制度により、民間事業者に運営が委託されていた。

 そのため、運営方針が徹底していないために現場への連絡事項が伝わっていなかったり、上層部が現場を把握していなかった。また、指定管理者制度により、事故の責任所在が市と民間事業者のどちらにあるのかが曖昧だったことも、事件が起きてしまった一因とされた。

 この事故が起きるまで、多くの地方自治体が指定管理者制度に高い関心を示していた。ある市の職員は、当時の状況を「どこの自治体も行財政改革は喫緊の課題になっており、指定管理者制度は恵みの雨のようなものだった」と話す。

 悲惨な事故により、指定管理者制度の導入機運は一時的に低下した。それでも“身を切る改革”を旗印にする小泉内閣では次々と行財政改革が進められていく。06年には「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」が成立。同法は、政府関係者や自治体職員間で“市場化テスト”と通称され、公共施設の運営や公共サービスを一時的に民間へ移行させて、うまく運用できるかどうかを試すというものだ。市場化テストは、指定管理者制度の拡大版と位置付けられる。

 市場化テストの導入により、奨学金や年金の徴収事務などが民間事業者に委託できるようになった。また、住民票などの公的書類の交付もコンビニエンスストアで可能になった。市場化テストが進められるに伴い、いったんは沈静化していた指定管理者制度が再び注目されるようになった。

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