単なる運営費削減にとどまる
そこでトレンドになったのが、公立図書館の民間委託だった。公立図書館に指定管理者制度を導入したことにより、図書館の運営は収支が重要視されるようになる。東京23区の職員は、こう話す。
「それまでの公立の図書館員は公務員であるがゆえに、高い人件費を必要とした。指定管理者制度で民間事業者が運営するようになったことで、人件費はかなり縮減している。それを図書館の本を充実させるための費用に回せればメリットもある。しかし、実際は行財政が苦しいので、単なる運営費削減にとどまっている」
図書館の民間委託には、当初は運営費の縮減といった財政的な部分のほかにもメリットはあるとされた。たとえば、図書館には司書と呼ばれる本のプロが一定数常駐する。しかし、市の職員も図書館員として配置される。市の職員はあくまでも市役所内の人事異動でしかなく、図書館運営のノウハウを有しているわけではない。現場を知らない職員が司書に指示することで図書館運営は混乱し、かえって使い勝手を悪くしてしまうケースもある。
一方、民間事業者に運営を委託すれば。図書館のプロが運営することになるからそういった事態は起きない。しかも、市役所のような1~2年で人事異動をすることもない。だから中長期的な運営方針を決めることもできると期待されたのだ。
ツタヤ図書館騒動が起きた原因は多々あるが、行政の目論見が大きく外れたことを物語っていることはいうまでもない。だが、公立図書館の民間委託は止まらない。
「東京23区でさえ財政的に厳しい区はたくさんある。地方の市町村はもっと苦しい。自治体の本音としては、図書館を廃止したいと考えているはずです。しかし、図書館は文化施設でもあり教育施設でもあります。廃止には議会の同意が得づらいし、なによりも住民からの反発も大きい。図書館を廃止したら、住民が減ってしまう可能性だってあります。しかし、民間委託なら『図書館がオシャレになる』『使い勝手がよくなる』と宣伝できます。だから、今後も財源の厳しい自治体を中心に図書館の民間委託は進むでしょう」(前出23区職員)
自治体が書店を支援
公立図書館の民間委託が拡大する一方、地方自治体が書店を運営・支援するという動きも出てきた。