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米山秀隆「不動産の真実」

タワーマンション、ある意味で供給過剰状態…修繕資金不足で積立金2.5倍の例も

文=米山秀隆/富士通総研経済研究所主席研究員
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タワーマンション、ある意味で供給過剰状態…修繕資金不足で積立金2.5倍の例もの画像1「Gettyimages」より

供給過剰かどうかを考える3つの視点

 近年、タワーマンションが数多く建設され、今後の供給計画も後を絶たない。不動産経済研究所によれば、2018年以降に完成予定の超高層マンション(20階建て以上)は294棟10万8757戸(2018年3月末時点)に上り、前年の調査から54棟1万6471戸増加した。都区部で供給が計画される超高層マンションは123棟5万5570戸に達し、戸数ベースで51%を占める。

 タワーマンションの大量供給については、供給過剰ではないかとの声もある。供給過剰かどうかを考える上ではいくつかの視点がある。

 第一に、これまでのところ供給されたタワーマンションは売れており、供給過剰で新築価格が値崩れしている状況にはない。したがって、供給に対して需要が存在するという意味では供給過剰にはなっていない。

 第二に、供給がハイペースで続いている一部地域では、鉄道などの交通インフラ、保育園や学校などの整備が追いついておらず、インフラや教育施設のキャパシティ対比では、供給過剰になっているという事実はある。

 第三に、新築時点で完売した物件であっても、10年、20年後にそれを中古物件として売ろうとした時に、需要があるのかという問題がある。マンションは、長期修繕計画に基づき必要な修繕費用を積み立てた上、定期的に大規模修繕が行われなければ、価値を維持することはできない。それができなければ最悪の場合、物件のスラム化に向かう可能性がある。

 タワーマンションの場合、必要な修繕積立金は通常のマンションよりも嵩み、区分所有者が多く合意にも困難を伴う。仮に、タワーマンションが適切なメンテナンスが行われずに価値を保てなくなった場合、中古物件としての需要が出ず、価格が大幅に値崩れするという可能性も考えられる。この点は、将来的にタワーマンションが中古物件として売れないという意味で、供給過多になってしまう可能性である。

タワーマンションの供給者、需要者にとってのメリット

 第一の視点、新築時の供給に対して需要があり、その意味で供給過剰にはなっていないという点については、タワーマンションが供給側、需要側の双方にとってメリットがあることによる。供給側にとっては、超高層であれば同じ土地面積であっても、より多くの住戸を販売することができ、収益を上げやすくなる。

 一方、需要者にとっては、都心部など利便性が高く地価が高い場所に住む場合に、高層建築であるため建設費用はかかるが、高い地価を多くの区分所有者で分担する形になるため、同じ場所に低層マンションを購入する場合に比べ、相対的に安い価格で取得することができる。また、タワーマンションならではの眺望や、充実した共用施設も魅力である。こうした魅力を持つタワーマンションは、購入後も値崩れしにくいと考えられており、居住目的ではなく、投資用に購入される場合も少なくない。タワーマンションの今後の供給計画が絶えないのは、こうした魅力により、今後も必ず需要がつくとの見通しに基づいている。

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

1986年筑波大学第三学群社会工学類卒業。1989年同大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研等の研究員を歴任。2016~2017年総務省統計局「住宅・土地統計調査に関する研究会」メンバー。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『世界の空き家対策』(編著、学芸出版社、2018年)、『捨てられる土地と家』(ウェッジ、2018年)、『縮小まちづくり』(時事通信社、2018年)、『空き家対策の実務』(共編著、有斐閣、2016年)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社、2015年)、『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社、2012年)など。
米山秀隆オフィシャルサイト

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