旧民主党から2012年末に政権を奪還した安倍政権は、6年にわたる長期政権になっている。その間、東京都議選の歴史的な敗北や沖縄県の知事選完敗といった躓きはあったものの、それなりに安定して政権運営を維持してきた。その一方、安倍政権を誕生させた原動力ともいえる経済政策、いわゆるアベノミクスによる景気回復を国民が実感できないという指摘も多い。
そうしたなか、今夏の参院選で自民党が大敗北を喫するという観測も出始め、永田町・霞が関界隈がザワついている。もし大敗北すれば、当然ながら安倍晋三首相の求心力は弱まる。現在、安倍内閣の支持率は堅調だが、自民党関係者も「この支持率は砂上の楼閣。急落する危険性は大いにある」と不安視する。
安倍政権の頼みの綱は、“お友達”である側近の議員と、雨が降ろうが槍が降ろうが安倍首相の支持を声高に表明する一部の有権者たちだ。安倍自民党を強烈に支持するのは、経団連をはじめとする大企業経営者と嫌韓・嫌中に振れた一般有権者とに大別できるが、彼らは時に利害が相反することもある。
たとえば、先の国会で成立した入管法や水道法の改正は前者が猛烈にプッシュしたといわれる。逆に後者は反対の論陣を張った。そのため、これまで安倍首相を支持してきた市民団体などが辞任を求めるデモを実施してもいる。支持団体が安倍支持の看板を下ろせば、党内基盤は一気に崩れる。ゆえに参議院選で敗北すると、党内からの風当たりは強くなるのは当然ながら、連立を組む公明党からも一定の距離を置かれる。それだけに、安倍政権にとって次の参院選は負けられない戦いになる。
広がらないアベノミクスの恩恵
しかし、安倍政権が参院選までもたないかもしれないと心配する声も囁かれ始めている。その要因は、今年4月に実施される統一地方選にある。
安倍政権の看板政策だったアベノミクスは、大企業だけに恩恵をもたらしてきたとの指摘もある。当初、中小企業や一般労働者に恩恵が少ない点を指摘されると、「大企業が潤えば、その恩恵は中小企業にも及ぶ」との説明を繰り返してきた。いわゆる、トリクルダウン理論だ。これを信じて、中小企業はひたすら耐えてきたが、その恩恵はいっこうに中小企業に波及しない。中小企業の我慢も限界に達しつつある。
また、アベノミクスで大企業が潤っているという状況も、地方に目を転じれば正しくない。東京に富が集中するばかりで、アベノミクスの恩恵は地方に届いていないからだ。第2次安倍政権は、決して地方への対策を怠っていたわけではない。実際、2014年に発足した第2次安倍改造内閣ではローカルアベノミクスを打ち出し、地方にもアベノミクスの恩恵を行き渡らせようとした。しかし、それも一時のポーズにすぎなかった。国土交通省の元幹部職員はいう。