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テレビ局が自局の“報道番組制作現場のダメさ”を隠さず撮影した『さよならテレビ』が話題

文=明石昇二郎/ルポライター
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 袋小路に迷い込んだ感のあるテレビが今、抱えている問題を、まずは「自画像」として自局の同僚たちに見せ、それにとどまらず、他局の番組制作者や視聴者にも見てもらい、皆で問題意識を共有し、番組への意見や感想を求めつつ、ともに出口(=解決策)を導き出していこうと考える――。

 そうでないのなら、わざわざ放送する必要はないのである。大手新聞社が、たまに社内報で自社の問題点を“記事”として書いたりすることがあるが、それと同様に、社内向けの“検証番組”にとどめておけばよかった。見方を変えれば、今のテレビ報道の現場はそこまで深刻なのだ、ということなのだろう。

 ルポ『さよならテレビ』は、今の報道番組制作現場のダメなところを、これでもかこれでもかというくらいに映し出していく。テレビが今後どうすればいいのかという答えは、すべてこのルポ番組の中にあると言っても過言ではあるまい。映し出された「ダメなところ」を改めればいいのである。あとは、観た人たちがどうするか次第で、テレビの未来は変わる。

『さよならテレビ』は、“テレビは今のままではいけない”“変われ”と言い続ける。見てもわからない人は置いてきぼりになろうと構わないという潔さが心地よいほどである。そこが、単に自虐的に自社の内幕を描いたり、内部告発的に自社を揶揄しようとしたりする番組とは一線を画しているところだ。

 番組に登場するシーンを事細かに紹介している記事はほかにもあるので、最後にそのURLを紹介することでお許しいただきたいが、特に私の印象に残ったシーンを2つだけ紹介したい。

これまでのテレビに「さよなら」

【シーン♯1】

 局の社員ではない外部スタッフのベテラン記者(49歳)が、ニュース番組で「共謀罪」法案の特集を担当することになった。彼は、NHKが同法案を「テロ等準備罪」と呼ぶ一方、民放他局の中には「共謀罪」と呼んでいる局があることについて、『さよならテレビ』のカメラに向かってこう語っていた。

「共謀罪という言葉を使わないメディアは、批判する気がまったくないという。権力の監視よりも、権力を支えるほうを選んでいるっていうことですよね。恥ずかしいけど」

 だからベテラン記者氏は、特集のナレーション原稿に「共謀罪」と書いた。するとデスクから「テロ等準備罪」と直されてしまう。ベテラン記者氏は『さよならテレビ』のカメラに原稿を見せながら、

「ここを直していただいたんですけど」

と、恥ずかしそうに呟く。

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