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テレビ局が自局の“報道番組制作現場のダメさ”を隠さず撮影した『さよならテレビ』が話題

文=明石昇二郎/ルポライター
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 そして放送後の番組反省会。報道局長(入社32年目)が報道局のスタッフに対し、

「共謀罪ね、国会で強行採決というかたちで成立してしまいましたが、我々メディアにとっても大変影響の大きい法律だと思います」

と、白々しく語るのである。その話を、ベテラン記者氏は憮然とした表情で聞いている。身内と語る際には「共謀罪」と言い、放送では「テロ等準備罪」とわざわざ言い換える。そんなダブルスタンダードの現実を、『さよならテレビ』のカメラは記録していた。

【シーン♯2】

「働き方改革」のため、残業時間を減らさないと労働基準監督署から目をつけられ、ペナルティを科せられるのはテレビ局も一緒だ。そこで、人材不足を補うべく制作会社から派遣されてきたのが、職歴2年という24歳の新人ディレクター氏。街頭インタビューもうまくできない。いわゆる「食レポ」も下手くそ。さらにはミスも連発し、デスクから叱られる日々。それでも笑みを浮かべながら苦闘している。だが、1年で派遣切りされることに。

『さよならテレビ』には、視聴率が振るわず、1年で降板させられる男性キャスター(入社16年目)も、メインキャストの一人として登場する。そのキャスターが、猫の殺処分の現状を伝えるニュースの中で、

「弱いものを守る世の中であってほしいですね」

とコメントするのだが、そのオンエアをサブマスターで見つめていたのが、クビが決まったばかりの新人ディレクター氏。いつも笑みを浮かべていた彼は、その時ばかりは素の表情だった。
        
    ※

「よくこれを放送できたものだ」などと評論している記事をネット上で見かけるが、そんな問題ではない。悠長に構えていられる状況にはないことを自覚しているからこそ、東海テレビは『さよならテレビ』を制作し、放送したのだろう。
 
 ちなみに、番組プロデューサーの阿武野勝彦氏(入社36年目)が「文春オンライン」のインタビューに語っていたところによると、『さよならテレビ』の「さよなら」とは、これまでのテレビに「さよなら」をすることなのだそうだ。

 ところで、東海テレビは優れたドキュメンタリー番組を映画化していることでも知られる。前出の「文春オンライン」インタビュー記事によれば、これまでに10本のドキュメンタリー番組が映画化され、なかには25万人もの観客を動員したもの(『人生フルーツ』)まであるのだという。興行としても大成功を収めているのだ。

 となれば、『さよならテレビ』が映画館で上映されるようになることを期待するしかない。それまでの間は、以下に紹介する記事でその概要をつかんでほしい。
(文=明石昇二郎/ルポライター)

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