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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

香港が危険地帯化、市民が大脱出…大規模デモに警察が過激な暴力、中国習近平指導部が屈服

文=相馬勝/ジャーナリスト
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 チャン氏が懸念したのは、香港市民がラム長官の強硬路線に強い不満を露わにしたことだ。インターネット上では10日午後9時半ごろ、約3700人の教師が「逃亡犯条例」改正案への反対に署名。教師らは、改正案が撤回されるまで全市のすべての教育現場でストライキを実施するよう呼び掛けた。

 また、香港中文大学、香港理工大学、香港科技大学など7つの大学が12日、授業のボイコットを発表。中文大学の蘇浚鋒・学生会会長は、「ラム長官が民意を完全に無視した」と非難した。蘇会長によると、9日夜、警官隊と抗議者が衝突したことで、中文大学の学生4人が当局に拘束された。また、香港教育界の労働組合である香港教育専業人員協会(教協)は、学生の授業ボイコットと教師のストライキを「尊重する」との考えを示した。

 さらに、50以上の福祉団体と宗教団体が、12日のストに加わると表明した。ソーシャルメディア上では、1000店以上の飲食店や雑貨店などの小規模な小売店や零細企業までも、12日にストを実施すると投稿。香港のキャリアフラッグであるキャセイパシフィック航空とキャセイドラゴン航空の一部の社員も、ネット上で署名活動を行い、労働組合にストの実施を要請した。

 これは、香港が司法の独立を失えば、高度な自治を認めた「一国二制度」が崩壊しかねないとの危機感が香港内で急速に高まり、いつもは香港政府寄りの経済界までもが、官僚主義的なラム長官のやり方に強く反発したためだ。

海外からも批判

 さらに、もう一つの大きな要素として、ラム長官の強硬姿勢に対して、米国を中心とする国際社会の反発も拡大したことだ。米民主党のナンシー・ペロシ米下院議長が条例改正案を香港の議会が承認した場合、香港に付与している貿易上の特権的な待遇を見直す考えを表明したほか、他の国々も同様の懸念を表明。とくに、中国は現在、貿易問題に絡んで敵対関係にあり、これ以上、米国政府とことを構えることは好ましくないとの判断が働いたといえる。

 これを裏付けるように、中国の劉暁明・駐英大使は「条例改正は中国の支持ではない」と言明。香港マカオ事務弁公室の報道官も改正案の審議延期の決定発表について、「各界の意見を広く聞き、社会の平静さを速やかに回復するためのものだ」などと評価する談話を発表した。

香港社会に深い傷跡

 これで、ひとまず香港情勢は落ち着きを取り戻すとみられるが、今回の混乱が香港社会に深い傷跡を残したのは間違いない。

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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