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沖有人「不動産の“常識”を疑え」

文京区、国立・私立中学への進学率4割の秘密…公立小選びの新基準「学区年収」とは

文=沖有人/スタイルアクト(株)代表取締役、不動産コンサルタント
文京区、国立・私立中学への進学率4割の秘密…公立小選びの新基準「学区年収」とはの画像1
文京区立窪町小学校(「Wikipedia」より/Nesnad)

 私には双子の子どもがいる。子どもが幼稚園児だった頃は、東京都江東区のタワーマンションに住んでいた。新婚時に購入したものだ。子どもが生まれてからは、マンションに隣接する都立の大きな公園によく遊びに行った。しかし、ある理由で引っ越しを突然思い立つ。

引っ越しを決めた思いがけぬ理由

 幼稚園は隣の区のお寺が運営しているところに通わせており、スクールバスでの送り迎えがあった。その幼稚園は生活する上での礼儀やしつけがキチンとしていた。年に一度の運動会は子どもの成長を実感できる感動的なもので、ママさんたちが涙をこぼす姿は印象的だった。この頃の生活には不満がなかった。

 しかし、ある理由でそのマンションから引っ越しをしようと決めた。その理由は、近隣の公立小学校のよからぬ噂を聞くようになったからだった。その小学校の1年生のクラスでは、子どもが先生の言うことを聞かない、大声を出して授業を妨害するなど、いわゆる学級崩壊のような状態になっているというのだ。また、学区内にある団地が外国人を大量に受け入れており、多様な学力レベルの中で最下レベルに合わせた授業になりがちだという。

「小学校は幼稚園よりも教育環境が悪そうだ」

 これを聞いたときはショックだった。新婚で移り住んだ場所は夫婦にとって悪くなかった。通勤時間は短くなったし、買い物などの生活環境も許容範囲だった。

 しかし、子どもの教育環境の話になると課題があり、解決方法としては、双子を小学校受験させて2人とも合格してもらうしかないように思われた。とはいえ、男女の双子であり、2人が合格できそうで共学のところとなると、受験する小学校を決めるのは容易ではなかった。

「教育環境の整った公立小学校に入れよう」

 これが、私たち夫婦の出した結論だった。そのために立地選定に入った。幼稚園に通わせている間に引っ越したとしたら、車での送り迎えが必要になろう。とはいえ、送迎の時間はできる限り短くしたいので、現在の家からあまり離れることもはばかられた。そこで、通っている幼稚園の場所と私の勤務地の関係から、文京区内で選ぶことにした。

文京区の公立小学校事情

 文京区で人気がある公立小学校は、頭文字を取って「3S1K」と呼ばれている。誠之小、千駄木小、昭和小、窪町小の4つのことで、それぞれ人気の小学校になるだけの理由がある。

 誠之小は東京大学がほど近い西片、昭和小は六義園という都立庭園そばの通称、大和郷と呼ばれる高級住宅地が学区内にある。千駄木小も元武家屋敷の住宅地を抱え、徒歩圏の西日暮里駅周辺や地下鉄で3駅以内に有名進学塾が揃っている。窪町小は近隣に学芸大学附属竹早小学校、お茶の水女子大学附属小学校、筑波大学附属小学校と3校の国立小学校があり、典型的な文教エリアとして名高い。

 こうした小学校では国立・私立中学受験率が高く、2月1日の都内の中学受験日には6年生の9割が受験で学校を休むといわれる。1月からは小学校に行かずに昼から塾通いをして受験対策をしていても、学校側は何も言わない例もある。

国立・私立中への進学率の格差

 実際、文京区の国立・私立中学校への進学率は44.2%で、1位の千代田区(44.6%)、2位の中央区(44.3%)と僅差の3位になっている。ちなみに、国立・私立中学校への進学率は東京都平均で18.8%となっており、5人に1人ほどが公立中学校に進学せず国立や私立の中学校に行っている。

 当時、私が住んでいた江東区の国立・私立中学校への進学率は22.5%と東京都の中では悪くないが、文京区の半分ほどにすぎない。この数字は、親の教育熱心度の表れと言っても過言ではないだろう。

「公立小移民」の実態

 こうして、晴れて希望の公立小学校に入学できた。人気校はクラス数も多く、学校に活気があり、親は総じて教育熱心だった。小学4年生くらいから進学塾に通わせ、中学受験をするのが当たり前という雰囲気は子どもに緊張感を持たせたと思う。遊び友だちも受験をするという環境は、自分もするという意識を持たせやすい。

 実は、小学校高学年になって引っ越し先のタウンハウスから近くの戸建て(賃貸)に引っ越している。ここは小学校に直線距離では近いものの、学区外で越境通学に当たった。住所の変更届を出すと、学区内に大きなマンションが建つなどした場合は学区内の生徒を優先するため、越境者は転校を余儀なくされる旨を伝えられた。幸い、学区内の高級住宅地は低層の戸建てが多く、大規模な高層マンションは建つ可能性が低い。こうして、卒業までこの小学校に通わせることができた。

 こうした、お目当ての公立小学校に子どもを通わせるために、その学区内に引っ越す世帯を「公立小移民」と呼ぶ。私もこれに該当するが、人気の公立小学校では定員の2割近くがこうした入学目的の引っ越し族になる。

「学区年収」が小学校のレベルを決める

 それだけニーズがあるのは明確だが、小学校の優劣をどのように判別するかはこれまで口コミのみに頼っていた。そこに「学区年収」というひとつの指標を与えると、多くのことがわかる。

 学区年収とは、公立小学校の学区内の町丁目の年収から算出する。親の年収と最終学歴は相関性が高く、学区年収が高ければその分教育熱心になる。先ほどの文京区の例が最たるものだ。公立小学校の学区年収が高いところは狙い目だ。首都圏の学区年収は「住まいサーフィン」【※1】という無料会員制サイトで開示しているので、参考にしてもらいたい。

 ちなみに、学区年収の高いところのマンションの資産性はほかのエリアよりも300万円ほど高い。所有すると、300万円分は価格が維持されやすいということだ。

(文=沖有人/スタイルアクト(株)代表取締役、不動産コンサルタント)

【※1】
住まいサーフィン

沖有人/スタイルアクト(株)代表取締役、不動産コンサルタント

沖有人/スタイルアクト(株)代表取締役、不動産コンサルタント

1988年、慶應義塾大学経済学部卒業後、2社を経て、1998年、現スタイルアクト株式会社を設立。マンション購入・売却者向けの「住まいサーフィン」は28万人以上の会員を擁する。「タワーマンション節税」などの不動産を使った節税の実践コンサルティングに定評があり、不動産分野でのベストセラー作家として講演・寄稿・取材・テレビ出演多数。主な著書に『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書、2012年)、『マンションを今すぐ買いなさい』(ダイヤモンド社、2013年)、『タワーマンション節税! 相続対策は東京の不動産でやりなさい』(朝日新書、2014年)など。
住まいサーフィン研究所

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