アルミニウムを含有する添加物は、国際的に生殖系及び神経発達に影響を与える可能性があるとして、健康保護等を目的とする国際的な政府間機関コーデックス委員会およびEUでは、アルミニウムの摂取量を低減することを目的に、添加物の基準見直しを進めてきた。
しかし、日本では厚生労働省が国際汎用添加物だとして、アルミニウムを含有する酸性リン酸アルミニウムナトリウム(膨張剤)、アルミノケイ酸ナトリウム(固結防止剤)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(固結防止剤)、カルミン(着色料)の4種類の食品添加物の使用を認める目的で、食品安全委員会に安全性評価の依頼をしていた。
この問題は、2015年12月23日付当サイト記事『危険なアルミニウム食品添加物が野放し!菓子パンや菓子、生殖器官や神経に悪影響』、17年3月14日付同『政府、危険なアルミニウム添加物含有食品の輸入解禁か…体の神経系・生殖系に危害』で、私は警告をしていた。
そして19年1月8日に厚労省は、食品安全委員会に対して「食品健康影響評価について意見を求めたことの取下げについて」という公文書を送付し、カルミンを除く3種類のアルミニウムを含有する食品添加物の安全性評価の取り下げを通知したのである。この公文書には取り下げ理由は記載されていないが、18年10月24日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会で厚労省は、次のように取り下げの理由を説明している。
「アルミニウム摂取量の低減が国際的に進められている状況を踏まえ、対日輸出国向けに行った調査の結果、必要性が認められなくなったと考えられたことから、国際汎用添加物に該当しないものとし、厚生労働省による指定に向けた取り組みを中断いたします。(略)食品安全委員会への食品健康影響評価の依頼を取り下げることといたします」(下線は筆者)
食品健康影響評価の取り下げ
アルミニウムの危険性は、以前から指摘されていた。06年のFAO(国連食糧農業機関)/WHO(世界保健機関)合同食品添加物専門家会議で、アルミニウムについて従来の摂取量基準7mg/kg体重/週以下の用量で、生殖系および神経発達に影響を与えることが判明したと発表された。その後、水腎症などの泌尿器病変などの影響も判明し、11年に基準を2mg/kg体重/週にし、06年時点の28.5%の水準まで引き下げられたのである。コーデックス委員会やEUでも、アルミニウムを含有する添加物由来の摂取量を低減させるために食品添加物の基準見直しを進めている。
厚労省も遅まきながら国際水準に到達したわけである。国際汎用添加物としての使用実態調査を行い、3品目のアルミ添加物について日本に輸出する企業がないことが判明したため、食品添加物指定の必要性がないという理由で食品健康影響評価の取り下げに踏み切った。
アルミニウム含有添加物、広範囲に使用
しかし、まだ問題は残っている。4品目のうちの着色料のカルミンは引き続き食品健康影響評価の対象となっており、このままでは食品添加物としての使用が認められる可能性が残っている。
さらに、現在日本において使用が認められているアルミニウムを含有する食品添加物は、広範囲に使われている。用途は膨張剤、色止め剤、品質安定剤などで、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウムの2品目、着色料としてアルミニウムレーキ、アルミニウムの2品目、製造用剤としてカオリン、活性白土などがある。
【用途ごとの主な対象食品】
・膨張剤(ベーキングパウダー等):メロンパンなどの菓子パン、焼き菓子、蒸し菓子等
・色止め剤:漬物(ナスの漬物、シソの実漬等)
・形状安定剤(煮崩れ等の防止):魚介類(タコ、イカ、クラゲ、ウニ等の魚介類)等
・品質安定剤:野菜等(クリ、芋、豆、ごぼう、レンコン等)の煮物
・着色料:食品全般
厚労省のマーケットバスケット調査(平成23年度〜平成24年度)では、小児(1−6歳)では暫定耐容週間摂取量(PTWI)を超える量を摂取をしていたことが判明した。原因としては、菓子パンや菓子類からの摂取が多いことが推定される。このため厚労省は、パン、菓子類へのベーキングパウダーとして使われる硫酸アルミニウムカリウムと硫酸アルミニウムアンモニウムの使用基準の見直しと、関係業界への自主的な低減を依頼した。
これを受けて、一般社団法人日本パン工業会は、13年8月に「アルミニウムを含む膨張剤の使用自粛について」という文書を公表し、アルミニウム食品添加物を使用しないことを決めた。しかし、依然として広範囲にアルミニウム食品添加物は使われており、国民の健康上の脅威となっている。
パン業界が、アルミニウム含有食品添加物の使用をしていないのなら、使用実態がないとして、食品添加物の指定を取り消すなど、その排除を進めるべきである。
(文=小倉正行/フリーライター)