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稲田俊輔「外食のディテール」

餃子の王将、「にんにくゼロ餃子」が逆に“やみつきの美味さ”になった裏で起きた事件?

文=稲田俊輔/飲食店プロデューサー、料理人、ナチュラルボーン食いしん坊
餃子の王将、「にんにくゼロ餃子」が逆に“やみつきの美味さ”になった裏で起きた事件?の画像1
「餃子の王将 HP」より

日本で一番愛されている餃子

 日本最大の中華チェーン、餃子の王将の看板メニューといえば、いわずもがな「焼き餃子」。日本で一番愛されている餃子といっても過言ではないかもしれません。私自身も、学生時代から今に至るまで大好物です。

 やや大判のなめらかな皮の中に、きめ細かくジューシーな餡がたっぷり詰まっています。油多めでバリっと焼かれるのもこの餃子の特徴ですが、中身の餡が野菜主体でクドくないため、重たさは感じさせません。餃子そのものにシンプルながらややしっかりめの味付けがなされているせいもあり、ビールのお供としてもさることながら、なんといっても白飯のおかずとして最高です。

「本場中国では餃子は餃子単体で食べるものであり、ご飯のおかずにする日本人は変」などと言う人もいますが、こと王将の焼き餃子に関しては、あきらかにおかずとして食べられることを前提としてつくられているように感じます。王将はチェーン店にしては比較的店舗ごとの自由裁量の幅が広いですが、各店ごとに工夫されている定食メニューのなかに、最安値の定食として「餃子定食」がまず間違いなくオンメニューされているのも、それを物語っています。

「にんにくゼロ餃子」登場!

 そんな王将の焼き餃子ですが、2016年、ちょっとした事件が起きました。「にんにくゼロ餃子」の登場です。おそらく王将の狙いとしては、新たな女性客の取り込みや、主に営業職のビジネスマンがランチタイムに餃子を避けざるをえない機会損失を防ぐことなどを狙った商品開発だったのではないかと思います。

餃子の王将、「にんにくゼロ餃子」が逆に“やみつきの美味さ”になった裏で起きた事件?の画像2
『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本 』(稲田俊輔/扶桑社新書)

 発売直後、私は興味本位でさっそく注文して食べてみました。そして、一回ですっかりこの餃子の虜となってしまったのです。にんにく不使用が嬉しかったから、ではありません。むしろその味そのものがすっかり気に入ってしまった、というのがその理由です。

「にんにくゼロ餃子」は、通常の餃子から単ににんにくを抜いただけのものではなく、代わりに生姜をたっぷり効かせた味だったのです。生姜のフレッシュな風味と辛味が、油多めでの焼き餃子をさらにさっぱりとさせ、通常の餃子よりむしろ後を引く「ヤミツキ」のおいしさになっていると感じました。また、にんにくの効いた普通の餃子はそうたくさん食べられるものではありませんが、こちらはむしろご飯なしでも飽きずにいつまでも食べられるおいしさ。実際このゼロ餃子の登場以来、私はこの餃子を毎回2人前ずつオーダーするのが常となりました。

ゼロ餃子、苦境に立たされる

 すっかりゼロ餃子のファンになってしまった私は、この商品が短期間のトライアル商品で終わってしまうのはあまりにもったいないという思いもあって、ネットでその評判を検索してみました。しかし、そこにはただただショッキングな光景が広がっていたのです。

「やはり、にんにくがないと物足りない」

「仕事中だから仕方なく食べる」

「臭いを気にしなくていいと思えば、これで妥協できなくもない」

「やっぱり昼は我慢して、夜に普通の餃子を食べたほうがいいね」

など、決してポジティブとはいえない意見ばかりが並んでいたのです。果ては「こんなものは餃子ではない」などという怒りにあふれた(?)極端な意見まで。「なんでみんなこのゼロ餃子の良さがわからないんだ?」「このままではこの素晴らしい商品はメニューからあっさり消えてしまうのではないか」と私は焦りました。だからというわけでもないのですが、それからも私は王将に行くたびに、このにんにくゼロ餃子を常に2皿ずつ注文し続けました。

 しかし、そのネットでの不評を裏付けるかのように「当店では扱いがありません」という店舗も少なくなく、また、無慈悲に品切れを告げられたこともありました。人気があって売り切れたというよりは、あまり売れないので最初からあまり数を用意していなかったのではなかったかと推測されます。

 ある店舗では注文が通されたのはいいものの、結局30分以上待たされて提供されたこともありました。この時はおそらくですが、あまり注文がないため冷凍で保管されていたものが急遽焼かれて出てきたのだと思います。皮の食感や餡の水っぽさなど、本来のクオリティとはかけ離れたものが出てきました。その残念なゼロ餃子を砂を噛む思いでつつきながら、私は「この商品、もう先は長くないのではないだろうか」という暗澹たる気持ちになりました。

 ところが意にはからんや、そんな状況は実は目立たないところで少しずつ変化していっていたのです。

(文=稲田俊輔/飲食店プロデューサー、料理人、ナチュラルボーン食いしん坊)

※後編に続く

稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長

稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長

料理人・飲食店プロデューサー。鹿児島県生まれ。京都大学卒業後、飲料メーカー勤務を経て円相フードサービスの設立に参加。和食、ビストロ、インド料理など、幅広いジャンルの飲食店の展開に尽力する。2011年、東京駅八重洲地下街に南インド料理店「エリックサウス」を開店。現在は全店のメニュー監修やレシピ開発を中心に、業態開発や店舗プロデュースを手掛けている。近著は『食いしん坊のお悩み相談』(リトル・モア)。

Twitter:@inadashunsuke

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