東京都を中心とする新型コロナウイルス感染症の再拡大が懸念されはじめ、国民の不安が高まっていた16日、東京都千代田区紀尾井町のホテルオータニには夕刻からスーツの襟元にバッジをつけた中高年が続々と集まっていた。ホテルの案内表示板には「志公会と語る夕べ」の文字。志公会とは麻生太郎副総理兼財務相が率いる自民党麻生派のことだ。自民党7大派閥の先陣を切るかたちで、志公会は政治資金パーティーを開催したのだ。ちなみに同日、東京都は都内で新たに286人が新型コロナウイルスに感染していると発表した。今月10日の243人を上回り、1日の感染者数ではこれまで最多となっていた。
「会場に敷き詰められた椅子」
会場にはぎっちりと椅子が並べられていた。椅子と椅子の間は20~30cm程度あけられていたが、いわゆる「ソーシャルディスタンス」が適切に取られていたのかは疑わしい。
やがて二階俊博党幹事長や岸田文雄政務調査会長、それに石破茂元幹事長らの姿も見られ、来場者1000人以上が着席して見守る中、麻生氏が登壇。飛沫感染の防止のためのアクリル板を隔てて、「政権をど真ん中でしっかり支えていきたい」「今の憲法で緊急事態に対応できるのか。憲法改正は最も急を要するテーマだ」などとぶち上げた。
一方、最近、メディアなどへの露出の減っている安倍晋三首相はビデオメッセージでの参加になった。
「総選挙の資金集め」「これがイベント解禁の理由では」の声も
出席した自民党関係者は語る。
「本来は5月に開催されるはずだったが、今月に延期になっていました。新型コロナウイルス感染対策を徹底するため、毎回恒例の食事提供も記念撮影もない異例の形式でした。定員も3000人以下にしたと聞いている。会場も広いですし、マスコミが騒ぐような『密』ではないですよ。例年はおいしい中華料理などが供され、立食パーティー形式で懇親が行われるのもそれもなかった。寂しいものです」
志公会以外の派閥も同様に今春開催予定だった派閥パーティーを延期中で、クラスター発生を危惧して9~10月に開催する予定だ。
他派閥の自民党議員秘書は「麻生さんは最近、しきりに衆議院解散を口にしているし、10月解散総選挙に備えてさっさと実弾(資金)を補充したいのかも」といぶかしむ。
パーティーに出席した別の自民党秘書は次のように推測する。
「官邸は今月10日に、イベント開催制限を緩和し、5000人の観客入場を認めました。名目は国内旅行促進事業『Go To キャンペーン』の開始が理由でしたが、このパーティーを開きたかったのでは……。どんなにZoom会議が世の中に広まっても、政治資金パーティーだけは政治資金収支法の規制もあって、こうやって人を集めないわけにはいきませんからね。
正直、コロナに感染しないか不安ですよ。それでも、この時代にバカバカしいことですが、各派ともにパーティーの開催が続くのではないですか?」
演劇や音楽、映画など各業界関係者の多くがイベントの開催に二の足を踏み、資金繰りの厳しさとコロナ感染クラスターの不安で悩みを深めている中、政治家はお気楽なことだ。
(文=編集部)