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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

来年早々、100万円相当の住宅ポイント付与開始で争奪戦?住宅購入、今から準備すべき

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 2020年11月5日公開の本欄の記事『住宅ローン減税、期間10年から13年へ延長か…年収一千万円以上の高額取得者のみ恩恵大』のなかで、9月の予算概算要求、税制改正要望では認められなかった住宅ローン減税拡充策の延長が復活しそうになっていることを紹介しました。それに続いて新たな住宅ポイント制度も認められそうだという、嬉しい情報情報が入ってきました。

住宅投資の減少は日本経済に大きく影響する

 住宅ローン減税、各種の住宅ポイント制度などは毎年の政府予算や税制改正などに盛り込まれるかたちで実施されます。例年8月末に国土交通省など中央省庁別の予算概算要求、税制改正要望がとりまとめられるのですが、今年はコロナ禍の影響もあって、9月末に延期されました。そこに向けて、住宅関連業界は住宅取得支援策の拡充に向けて、積極的な活動を展開してきました。

 住宅業界は、2019年10月からの消費税増税に加えて、20年に入ってからのコロナ禍で大打撃を受けています。このままでは住宅業界が苦境に陥るだけではなく、新設住宅着工戸数の激減が避けられず、わが国全体の景気の足を引っ張ることになりかねません。

概算要求、税制改正要望には盛り込まれず

 そうならないように、業界ではかつてないほどの思い切った住宅取得支援策が必要だと訴えてきました。その中身を整理すると、(1)住宅ローン減税制度の控除期間10年から13年への拡充策の延長、(2)1戸あたり最大200万円相当の新たな住宅ポイント制度の創設、(3)住宅取得資金贈与の特例枠の拡充――が3本柱といっていいでしょう。

 しかし、9月末の予算概算要求、税制改正要望のとりまとめにおいては、どれも認められませんでした。国土交通省の予算でも、喫緊のコロナ禍対策、続出する水害などへの対策が最優先され、住宅関連は後回しにされた観が否めません。

概算要求書の末尾に復活を匂わせる文言も

 しかし、国土交通省の住宅局関係の概算要求書の末尾に、こんなフレーズが盛り込まれていました。

「新型コロナウイルス感染症拡大及びその防止策による影響を含む今後の経済情勢を踏まえた住宅に関する対策の取扱いについては、予算編成過程で検討する」

 お役所ことばで、回りくどく、一般の人にはわかりにくい表現ですが、要は、9月末段階の予算概算要求、税制改正要望では採用されなかった各種の施策に関して、12月の政府予算案、税制改正大綱の作成に向けての検討作業のなかでの復活に、含みをもたせた文言といっていいでしょう。

住宅ローン減税拡充策が新聞報道で明らかに

  実は、著者はこの文言が気になっていたので、10月の初めに国土交通省の担当者に確認を入れています。

「これは、新たなポイント制度などが、12月の政府予算案に盛り込まれる可能性があるということなのか」と聞いたところ、「その通り」という答えが返ってきました。国土交通省の幹部も、このままではいけないという危機感を持っているのでしょう。

  実際、10月には、住宅ローン減税の拡充について、延長の方向で検討が進められているという新聞報道が流されました。採用されなかった施策が、復活する動きが出てきたわけです。これは、11月5日付けの本欄でご紹介した通りです。

次の経済対策のなかで取り上げられる可能性

 さらに、ここにきて住宅関連団体の幹部によると、新たな住宅ポイント制度創設の可能性が高くなっているそうです。国土交通省の幹部や、建設・都市政策関係の国会議員などへの働きかけを行っている過程で、「満額の200万ポイントは難しいにしても、100万ポイント程度の新制度の創設は大丈夫じゃないかという感触を得ている」というのです。

 菅首相は、新たな経済対策を盛り込んだ20年度の第三次補正予算を編成する方針を固めたといわれ、21年度予算と一体的に編成し、「20年1月から21年3月までの15か月予算」として、切れ目のない対策を講じる方針といわれています。

消費者には大きなインセンティブになる

 この20年度第三次補正予算のなかに、新たな住宅ポイント制度が盛り込まれるだろうとしています。政府は一刻も早く成立させるため、20年1月早々には臨時国会を召集し、第三次補正予算を成立させる方針といわれます。そうなると、住宅ポイント制度は4月を待たず、1月中にも実施される運びになります。ただし、補正予算ではなく、来年度予算に持ち越しになる可能性もあるので、注意が必要です。

 仮に、1戸当たり最大100万円相当のポイント制度が実現されれば、大きな効果が期待できるのはいうまでもありません。これまでのポイント制度では最大でも50万ポイント、60万ポイントでしたから、その2倍以上の規模になり、消費者にとっては大きなインセンティブになるはずです。

「次世代住宅ポイント」は大きな効果を発揮せず

 こうした住宅ポイント制度、実は19年10月からの消費税引上げにともなって「次世代住宅ポイント」が実施されました。

 しかし、原則的に新築住宅は1戸当たり最大35万ポイントと枠が小さく、かつ「即時交換」が認められないという問題などもあって、あまり実効性のある施策とはなりませんでした。その反省を踏まえて、より効果のある施策とするべく、1戸当たりのポイントを少なくとも100万ポイントに拡充し、合わせて新制度では「即時交換」も認めるべきだという方向性にあるようです。

「即時交換」は消費者にも業者にもメリット

 この「即時交換」というのは、業者が提供する設備などをポイントとして認めるという仕組みです。たとえば、コロナ禍対策のための設備などを業者が用意して、それを消費者がオプションなどとして選べば、ポイントを業者が直接受け取れる制度です。

 業者としては大量に仕入れて安く提供できる上、売上げの拡大につながります。消費者もわざわざ量販店などに出かけることなく、必要な設備を手間いらず、しかも安く設置できるメリットがあります。

「即時交換」が認められれば効果がより大きくなる

 それに対して、「次世代住宅ポイント」では、この「即時交換」が認められなかったため、必要な設備などを消費者自身がポイントを使って自分で手配するしかなく、大量仕入れなどのメリットがないため、35万ポイントを取得しても、実際には15万円~20万円相当の商品にしかならなかったといったデメリットがありました。

 しかし、「即時交換」を認めれば、業者も売上高の拡大につながりますから、積極的な営業活動を行うようになり、住宅着工戸数の拡大にも貢献するはずです。

来年早々の実施なら、今から準備を始めるべきかも

 来年早々からスタートする可能性が高いのであれば、今から住まい選びに入ってもいいかもしれません。合わせて、住宅ローン減税の控除期間延長も適用される見込みです。控除期間を10年から13年に延長する拡充策は、21年12月末までに入居することが条件でしたが、これが恐らく22年12月までに延長されます。契約から引渡しまでの期間が長い大規模マンションでも、安心して利用できるようになります。一般の住宅で、10年間で最大400万円の控除額が、13年間で480万円に増えるのですから、新たな住宅ポイント制度の100万円と合わせれば、180万円もの負担の軽減です。

親の資産がある人なら贈与税非課税枠拡充も

 同時に、住宅取得資金等贈与特例の非課税枠も拡充される可能性があります。現在の制度では、非課税枠は1500万円ですが、3000万円まで増えるかもしれません。

 非課税枠が1500万円だと、3000万円の贈与を受けても、毎年の基礎控除110万円に1500万円を加えた1610万円を引いた1390万円が課税対象になります。税率は40%で控除額は190万円なので、(3000万円-110万円-1500万円)×0.4-190万円で366万円の贈与税がかかります。非課税枠が3000万円になれば、それがゼロになるのですから、メリットははかりしれません。

 実際、消費税増税に合わせて非課税枠が3000万円に引き上げられていた19年度には、グラフにあるように贈与する人が増え、平均贈与額が急増しました。たいへん効果が大きいことが明らかなだけに、再度非課税枠が引き上げられる可能性は高いのではないでしょうか。

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施策が揃えば人気物件が買いにくくなる可能性も

 もちろん、まだまだ断言できる段階ではありませんが、もしこれらの住宅取得支援策が実現されれば、21年のマンション購入環境は急速に改善します。住宅ローンの金利も超低金利が継続されるでしょうから、いよいよチャンスのときかもしれません。

 そうなると、多くの人がいっせいに住宅取得に動き始めることになります。人気物件にお客が殺到して、なかなか希望の物件を買えないといった事態も想定されます。それだけに、今から準備を進めておき、施策が揃った段階で迅速に動けるようにしておくのがいいのではないでしょうか。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


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