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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

菅内閣、不妊治療の保険適用に期待の声…高額な治療費、100万円超の治療も

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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菅内閣、不妊治療の保険適用に期待の声…高額な治療費、100万円超の治療もの画像1
「Getty Images」より

 新型コロナウイルスの感染拡大への対策の遅れ等により支持率が大幅に低下している菅義偉首相であるが、その一方で期待が高まるのが不妊治療に対する「保険適用の拡大」である。

 菅首相は自民党「不妊治療への支援拡充を目指す議員連盟」からの「不妊治療への公的保険適用までの間、体外受精や顕微授精に対し3回までは40万円を給付するなど助成を拡大する」という申し入れに対し、「最優先で取り組む」と応じた。これを受け、2022年4月の保険適用を目指す方針だ。

 昨今、不妊症は増加傾向にあり、経済的負担の軽減は不妊治療に取り組む夫婦にとって朗報となるだろう。しかしながら長期的に見て、不妊症の増加を食い止めるには「不妊症」「不妊治療」について広く認知されることが必要だと感じる。不妊症治療に取り組む三軒茶屋ARTレディースクリニック院長、坂口健一郎医師に話を聞いた。

菅内閣、不妊治療の保険適用に期待の声…高額な治療費、100万円超の治療もの画像2
坂口健一郎医師

 一般的に避妊をせず自然に任せた状態で2年間、妊娠しなければ不妊症といわれたが、それは20代前半が結婚適齢期とされていた時代の目安である。晩婚化が進んでいる現代、2019年の婚姻時の平均年齢は男性31.1歳、女性29.4歳というデータもある。仮に29歳で結婚した場合、そこから2年間、自然に任せてから判断するのでは、妊娠のチャンスをさらに低下させる可能性もある。

「現代での不妊症の定義は、1年以上たっても妊娠に至らない場合を指します。不妊原因が検査で判明するのはわずか半数のため、不妊症は不妊期間を1年と区切って定義しています」

 不妊の確定診断よりも、「治療開始時期」が重要だという。

「女性が35歳未満では1年以上たっても妊娠しないとき、35歳以上では半年以上たっても妊娠しないときが治療を開始すべきタイミングと推奨しています」

 また、不妊症には、着床しても流産を繰り返す「不育症」もあり、原因を知り治療することで、正常な妊娠をすることも可能となるケースも多いという。

検査の重要性

 不妊治療といっても、さまざまであり、自然妊娠から人工授精まで患者によって希望は異なる。不妊治療には医師の治療方針と患者のニーズが一致することが成功への近道でもある。坂口医師は、不妊治療を希望する患者のため、定期的に説明会を行っている。

「不妊治療を希望する人の多くは『早く結果を出したい』と思っています。そのためにも、まずは今の状態を知る必要があり、スクリーニング検査が必須となります。不妊治療に伴う検査の必要性や不妊治療について説明し、理解していただいた上で治療を開始するかどうかを決めていただいています」

 スクリーニング検査(感染症・末梢血・肝機能腎機能・血液型・甲状腺・クラミジア抗体・凝固機能・抗精子抗体)は、不妊治療を始めるにあたって健康状態や不妊の原因となる疾患を調べるために不可欠なものである。

「血液凝固機能に異常があれば、妊娠しても流産を繰り返してしまうし、甲状腺疾患が不妊の原因である場合も多く、治療により妊娠の確率が上がることもあります。また、抗精子抗体があれば体外受精をすることになります」

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