9月27日にアメリカから帰国し、14日間の隔離期間を経て、秋篠宮家の長女眞子さまとともに記者会見する予定と報じられた小室圭さんについて、その“鈍感力”を「週刊新潮」(9月30日号/新潮社)が指摘している。
たしかに、秋篠宮さまが望まれた「多くの人が納得し、喜んでくれる状況」にはほど遠いどころか、コロナ禍で経済的に困窮する国民も少なくない状況で、結婚式も「納采の儀」も「朝見の儀」も行わない“暴走婚”に突き進むのは、かなりの“鈍感力”の持ち主だからではないかと疑いたくなる。
しかも、小室家側代理人の上芝直史弁護士は9月14日に、母親の佳代さんの元婚約者の代理人に「佳代さんがあなた方に向き合うには、まだ時間がかかる」と言い渡したらしく(「週刊文春」9月30日号/文藝春秋)、記者会見や入籍までに佳代さんの“金銭トラブル”が解決しているかどうか微妙な状況にもかかわらず、強行するのである。
もっとも、“鈍感力”を武器に、利用できるものはとことん使い尽くし、批判をものともせず、のし上がった成功者はまれではない。こういうタイプには、アメリカの精神科医グレン・ギャバードが「無自覚型のナルシシスト ( Oblivious Narcissist )」と名づけたタイプが多い。
ギャバードは、強い自己愛の持ち主を「無自覚型」と「過剰警戒型 ( Hypervigilant Narcissist)」の2種類に分けたのだが、「無自覚型」には、ある種の“鈍感さ”が往々にして認められる。そこで、今回は、この「無自覚型」の特徴について解説しながら小室さんの“鈍感力”の原因を探っていきたい。
「無自覚型」の特徴
ギャバードは、「無自覚型」の特徴として次の6つを挙げている。
1) 他人の反応に気づかない
2)傲慢で攻撃的
3)自己陶酔
4)注目の的でいたい
5)“送信器”はあるが、“受信器”がない
6)他人の気持ちを傷つけることに鈍感
まず、小室さんが国民の反感や怒りをものともせず、眞子さまとの結婚を強行するのは、1)他人の反応に気づかないからだろう。これは、自分のふるまいが他人にどう思われるか、どんな反応を引き起こすかに想像力を働かせられないことによる。
この想像力の欠如は、6)他人の気持ちを傷つけることに鈍感な面とも密接に結びついている。母親の元婚約者が400万円を超えるお金を用立ててくれたおかげで、自分は学費の高いICU(国際キリスト教大学)に進学でき、眞子さまとも出会えたうえ、留学もできたが、その一方で元婚約者は経済的に困窮して自宅マンションを売る羽目になり、現在も苦しい生活を送っていることに思いが及ばない。もちろん、同情も憐憫の情も覚えない。だからこそ、4月8日に出した文書では、悪いのは元婚約者で、自分たち母子は被害者であるかのような主張をしたのだろう。その結果、元婚約者を深く傷つけても、激しく怒らせても、お構いなしのように見える。
小室さんが4月8日に出した文書からは、2)傲慢で攻撃的な印象も受けた。これは、強い自己愛ゆえに自分自身を過大評価しているからだろう。この過大評価のせいで、3)自己陶酔にも陥りやすい。「自分はこんなにスゴイ」と思い込み、周囲が見えなくなるからだが、4月8日の文書には、自己陶酔の匂いもプンプン漂っていた。
また、4)注目の的でいたいという自己顕示欲も強そうだ。この自己顕示欲は、ICU在学中に「海の王子」になったことやアナウンススクールに通っていたことに如実に表れている。その後の「肩書コレクター」的な一連のふるまい、さらには平成天皇の初孫である眞子さまへのプロポーズにも、自分の付加価値を高めてそれを誇示したいという欲望が透けて見える。
こうした特徴はすべて5)“送信器”はあるが、“受信器”がないことによる。自分がいかに優秀で、どれだけすごい経歴と肩書の持ち主かを認めてほしいという承認欲求が強すぎ、発信ばかりしている。だから、周囲がそれをどのように受け止めるかに想像力が働かない。いや、そもそも想像してみようとさえしない。当然、敵意や反感を買う。だが、それを敏感にとらえる“受信器”がない。もしくは、“受信器”は一応あるのだが、その感度が非常に低い。あるいは、薄々感じてはいても、しばしば「どうでもいい」と軽視して、意に介さない。
なぜ“鈍感さ”に無自覚なのか?
それでは、なぜ自らの“鈍感さ”に無自覚なのか? その原因として次の3つが考えられる。
1)もともと感受性が低い
2)他人の反応を遮断
3)周囲の容認
まず、1)もともと感受性が低い人は、一定の割合で存在する。これは、持って生まれた素質なので、いかんともしがたい。小室さんの母親の佳代さんも、“送信器”はあるが、“受信器”がないように見えるので、もしかしたら親譲りなのかもしれない。
必ずしもそれが悪いというわけではない。感受性が低いからこそ周囲の反応を気にせず自分のやりたいことや好きなことに集中でき、その結果成功する場合もある。ただ、周囲の目には「空気が読めない」「自分ファースト」と映ることもないわけではない。
2)他人の反応を遮断するのは、自己愛が傷つかないようにするための防衛メカニズムである。意外に思われるかもしれないが、ナルシシストは「無自覚型」であっても、自己愛が少しでも傷つくことに敏感で、何とかそれを避けて自己評価を守ろうとする。
小室さんは小学生の頃に、父親さらには父方の祖父母を自殺で喪ったとの報道もあり、相当強いショックを受けたはずだ。そのときの苦い経験から、他人の反応を遮断し、自己愛が傷つかないようして自分の心を守ろうとするようになったとも考えられる。
3)周囲の容認によって、“鈍感さ”が獲得されることもある。小室さんの場合は、母親から溺愛され「王子さま」扱いされたことによって、他人の反応など気にしなくてもいいと思うようになり、結果的に学習された“鈍感さ”とでも呼ぶべきものが認められるようになったのかもしれない。
それに拍車をかけたのが眞子さまとの結婚である。この結婚によって自分はロイヤルファミリーの一員になり、ロイヤル特権を手にするのだから、下々の者たちの反応など気にする必要はないと勘違いしているのではないかと私はひそかに疑っている。
もっとも、アメリカは「自己愛過剰社会」なので、小室さんくらいのナルシシストはいくらでもいるのではないか。
何しろ、「現在、アメリカではナルシシズムが流行病(エピデミック)にまでなっている」という指摘もあるほどだ。「エピデミック」という言葉は、新型コロナウイルスの感染拡大によって日本でも有名になったが、「ある集団内の非常に多くの個体が罹患する病気」と定義される。アメリカでは、ナルシシズムがまさにこれに当てはまるというわけで、実際、自己愛的なパーソナリティの特徴を示す人は1980年代から現在まで肥満と同様の速さで急速に増加している。しかも、2000年以降、その増加傾向に拍車がかかっているようだ(『自己愛過剰社会』)。
だから、日本国民がどれだけ反発し、怒ろうとも、小室さんは持ち前の“鈍感力”を発揮して、入籍後にアメリカに戻り、眞子さまとの新生活を始めると思う。それでも、少なくとも私は記者会見にも結婚にも厳しく突っ込ませていただきます。
(文=片田珠美/精神科医)
参考文献
ジーン・M・トウェンギ、W・キース・キャンベル『自己愛過剰社会』桃井緑美子訳 河出書房新社、2011年
Glen 0.Gabbard : Two Subtypes of Narcissistic Personality Disorder. Bulletin of the Menninger Clinic.53, 527-532. 1989