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東京都、五輪コロナ対策の報告書で自画自賛のオンパレード…新規感染者数が急増でも

構成=編集部、協力=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長
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東京都公式サイトより

 東京都は5日、『東京2020大会のコロナ対策の取組結果』と題する報告書を発表した。東京オリンピック(五輪)関係者への徹底的なスクリーニング、人流の抑制などを挙げた上で、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会や都の五輪期間中の新型コロナウイルス感染症対策を「大会中の様々な取組は、全体として有効に機能した」と評価する内容だった。

 五輪開会式後、東京都内では新規陽性者数(発症日別)が急増し、8月5日には5042人に達したことは記憶に新しい。都が賛美するように、政府や都の一連のコロナ対策は有効だったのか。9月17日付で当サイトに記事『【検証】東京五輪パラ、コロナ感染者174人発生の原因…無症状感染者のリスク、改めて浮き彫り』を寄稿した特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏に見解を聞いた。

 なお、東京都の報告書の概要は以下の通り。原文ママで引用する。

〇コロナ禍における安全・安心な大会を実現するため、マスクや物理的距離の確保、三密の回避といった基本的コロナ対策の徹底に加え、海外入国者数の絞込み、入国前の2回の検査および入国後の定期的な検査の実施、厳格な用務先制限/行動管理、健康管理、陽性者が確認された場合の迅速な隔離等により、海外からの感染の持込を抑制し、選手村や競技会場における感染拡大を防止した。

〇これらの総合的な対策を講じたことにより、大会参加者の陽性率は、空港検疫0.10%・スクリーニング検査0.03%に留まり、選手村や会場でのクラスターの発生もなく、専門家からも「大会は安全に行われた」「行動管理や検査などの対策がうまく機能した」との評価をいただいた。

〇さらに、大会に伴う人流を抑制するため、交通需要マネジメントの推進、ライブサイト等の中止・デジタル配信への転換、多くの会場で無観客開催としてステイホーム観戦を呼び掛けたことなどにより、人流の抑制が図られた。

〇なお、推定感染日ベースでの実効再生産数は、7月21日をピークに大会期間中は低下し続けている。

〇大会中の様々な取組は、全体として有効に機能

 都は五輪選手村での「バブル方式」などの成功を挙げ、再三の呼びかけにより都内の滞在人口が減少したことも強調。主要駅の鉄道利用者数の減少や上水道の配水量データ、視聴率データなどを用い、多くの都民が五輪期間中、在宅していたとして、こうした取り組みが実行再生産数の減少につながったとしている。

<上昌広氏の見解>

そもそも緊急事態宣言を発出したことがコロナ対策の失敗の証左

 五輪選手らに世界標準の対策を適用し、検査を徹底したことは評価できると思います。一方、五輪選手と関係者で感染者数が違います。ボランティアの感染者は多いです。選手に関してはどこにも行かせずに選手村に閉じ込めて、検査を徹底したから感染者を抑制できたのです。

 8月半ばのピーク時、G7の中で日本の感染者数は決して少なくありませんでした。イギリス、アメリカよりは少ないですが、イタリア、ドイツ、カナダより多い。G7の平均的な数値で、韓国よりはるかに多かった。オリンピック開催中に、国民の移動に関して規制をかけていたのはG7の中で日本だけでした。

 空気感染の可能性を無視して、(営業制限をかけて)飲食店いじめをする一方、「新学期が始まったら感染者が増える」との予測が出されていましたが、増えませんでしたよね。政府は8月25日に再度、期間を延長する緊急事態宣言を発出していますが、この日が日本の新規感染者数のピークでした。ということは、政府も専門家会議も、感染状況をまったく予想ができていなかったということです。

 また五輪全体としての感染対策も、成功だったかどうかはわからないというのが実情ではないしょうか。わずかであったとしても、試合に出ることができなかった選手がいるからです。この方々は海外で感染した可能性は低く、国内で感染した可能性が高いと思われます。

 それを明らかにするためには、国立感染症研究所が持っているような遺伝子シークエンスのデータを出さなければいけません。9月17日付の記事は国際オリンピック委員会(IOC)が感染者の情報をすべて出しているから書くことができました。しかし、日本政府はまったく情報開示をしていません。

 いずれにしても「五輪期間中に緊急事態宣言を出していた」ということをもって、政府と都の感染症対策は失敗していたと言えるのです。少なくともオリンピックのために緊急事態宣言を出したのなら、本末転倒なのです。

世界の新しい知見を省みず、頑迷に“当初対策”を実行する日本

 選手の感染者は一般国民よりは少なかったけれど、これだけ管理をしても漏れた人が厳然としていて、試合に出ることができなった人がいる。本来であれば、その人たちのことを分析しないといけません。それを検証する姿勢がまったくないことが大いなる問題なのです。

 選手村で行われた厳しい隔離措置「バブル方式」でも空気感染には無効です。現在、世界的にコロナの空気感染の可能性が指摘され始めています。仮に空気感染するのであれば、三密対策と“濃厚接触者探し”という対策は、効果的とはいえません。少なくとも濃厚接触者を探すことで、それ以外の人たちの検査の機会を奪ってしまうからです。

 コロナ禍が本格化し始めた当初、濃厚接触対策は間違いではありませんでした。しかし、この1年半の間に世界中で新しい知見が蓄積されてきています。にもかかわらず、感染症対策に関し、日本は新しい知見を取り入れ、方向転換をしてきませんでした。それこそが問題なのではないかと思います。

(構成=編集部、協力=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長)

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