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撮り鉄が撮影のために車内通報ボタン押下…マナー違反行為をなくすための根本的対策

文=Business Journal編集部、協力=梅原淳/鉄道ジャーナリスト
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ネット上に投稿された、近鉄名古屋駅で車内通報ボタンを押下した撮り鉄の男性を撮影した動画
ネット上に投稿された、近鉄名古屋駅で車内通報ボタンを押下した撮り鉄の男性を撮影した動画

 撮り鉄の男性が希望の構図を撮影するために車両内の通報ボタンを押下し、車掌に注意される動画がネット上で拡散し、物議を醸している。

 トラブルは8月12日の夜、近鉄名古屋駅で起きた。停車中の車両内で、撮り鉄とみられる男性乗客が、降車ホーム側から車両の前方正面にある前照灯をライトがついた状態で撮影したいと考えたが、その時点では降車ホーム側のドアは閉まっており(左右反対側の乗車ホーム側のドアは開扉)、車内通報ボタンを押下。この乗客は駆け付けた車掌に、降車ホーム側のドアを開けてもらえないかと要請したが断られたというのが事の顛末だ。

 その様子を撮影した動画がSNS上に投稿されており、それを確認すると車掌は男性に対して次のように語っている。

「もし写真を撮りたいんだったら、もういっぺん出て、自分で撮ってください。この電車に乗りたいんだったら、乗ってください。(車内通報ボタンを指さして)これは緊急用のものです。もしこれを押して他のところで何かあった場合、あなたはどうするんですか? あなたがこれを押して私が処理している関係で、その対応ができなくなるんですよ。どうするんですか、そういう場合」

 車掌は一貫して冷静沈着な話しぶりだったためか、男性は特に抵抗する様子もなく「困りますね」と理解を示した。

 一部の撮り鉄の非常識な行動が問題視されることは少なくない。ホームに大勢の撮り鉄が終結して所狭しと三脚を立てたり、警報機に上ったり、ホームから身を乗り出して線路に落下するというケースも珍しくなった。最近では、国鉄時代の色に塗り替えられたJR西日本の特急「やくも」を撮影するために鳥取県伯耆町に鉄道ファンが殺到。道路の両サイドに多数の車が駐車され住民の通行が妨げられたり、撮影のために私有地の木が勝手に伐採されるケースも出たことがニュースになっていた。

 長年の鉄道ファンは言う。

「昔から貴重な車両や電車が走る絶景スポットを求めて撮影する人は存在したが、いわゆる“鉄道マニア”扱いされるほど数が少なかったし、当人もそれを認識していたため大胆な行動に出るようなこともなかった。ここ数年で問題視されるようになったのは、やはり数が増えて一つの場所に大挙して撮影者が訪れるようになったことが大きな要因では。世間的にも“撮り鉄”という認知された存在になり市民権を得て、加えて、より良い写真を求めて撮り鉄たちの間で競争めいた現象も起きていることで、行動の大胆さに拍車がかかっている印象がある」

 今回のように撮影のために車内通報ボタンを押下するという行為が常識の範囲を超えることは論を待たないが、一部の撮り鉄たちの迷惑行為をなくす方法はないのだろうか。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏は次のように解説する。

「新しい鉄道写真」を示していく必要

 車内に設置されている通報装置は正式には非常通報装置といいます。文字どおり車内で起きた非常事態、たとえば火災が起きたとか、急病人が出たといった事象を運転士や車掌に伝えるためのものです。

 非常通報装置が押されると、運転士や車掌は実際に車内で何が起きたかを確認します。このため、最寄りの駅に緊急停止したり、駅に停車中であれば出発を延期するなど、列車の運行に影響が出てしまうのです。となると、逆に非常通報装置を使用することをためらうかもしれません。仮に非常事態であるのか判断しづらいというのであれば、運転士や車掌に直接伝えるのもよいでしょう。

 撮り鉄のマナー違反と呼ばれている事象は大きく分けて2種類あります。一つは同じ場所に多くの人たちが集まり、しかも皆が被写体となる列車だけを写し込んだ画像を撮影しようとするために生じた混乱に起因するトラブルです。もう一つは今回起きたように、撮影者が理想とする構図で列車を撮影したいために取った行動によって周囲に迷惑をかけてしまう事象となります。後者の具体的な例は、列車の周囲の木やロープが邪魔だからと勝手に切ったり、取り去ってしまったり、そこまで行かなくても今回のように前照灯を付けてほしいとか、逆に消してほしいと運転士や車掌に注文を付けるといった行動です。

 こうしたマナー違反をなくすのはなかなか難しいと思います。確かに周囲に人や物などが車両を遮らずにすっきりと写った状態で撮影したいでしょう。しかし、鉄道というものは実はそうした人や物が周囲に存在することで成り立っています。鉄道趣味の世界で価値観を変えないと、いつまでもこうしたトラブルはなくなりません。見本となる写真を掲載する鉄道趣味の雑誌が少しずつ「新しい鉄道写真」を示していく必要があります。

(文=Business Journal編集部、協力=梅原淳/鉄道ジャーナリスト)

梅原淳/鉄道ジャーナリスト

梅原淳/鉄道ジャーナリスト

1965(昭和40)年生まれ。大学卒業後、三井銀行(現在の三井住友銀行)に入行し、交友社月刊「鉄道ファン」編集部などを経て2000年に鉄道ジャーナリストとして活動を開始する。『新幹線を運行する技術』(SBクリエイティブ)、『JRは生き残れるのか』(洋泉社)、『電車たちの「第二の人生」』(交通新聞社)をはじめ著書多数。また、雑誌やWEB媒体への寄稿のほか、講義・講演やテレビ・ラジオ・新聞等での解説、コメントも行っており、NHKラジオ第1の「子ども科学電話相談」では鉄道部門の回答者も務める。
http://www.umehara-train.com/

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