会員制スーパー「コストコ」のプライベートブランド「カークランドシグネチャー」のトイレットペーパー「バスティッシュ」が原因と思われる排水管の詰まりが多発しているというコメントがSNSに相次いで投稿され、注目を集めている。たとえば、
<ウチのトイレの配管が詰まった時も、業者から『コストコのトイレットペーパーを使いましたか?』と聞かれた>
<節水トイレだからなのか、ウチでも詰まった>
<コストコのは水に溶けづらい>
といった声が寄せられている。
本当にコストコのトイレットペーパーは排水管に詰まりやすいのか。それともトイレットパーパー以外のところに詰まる要因があるのか。住宅の水道設備工事を行う会社「イナセ」の代表取締役、川田賢興さんに話を聞いてみると、開口一番、こんなコメントが。
「詰まりやすいです」
水回りのプロがこう主張するのには理由があった。
「コストコのトイレットペーパーが原因の排水管詰まりは、我々の業界では『あるある話』です。高圧洗浄機を使って作業したら、溶けてないトイレットペーパーの塊がゴロンと出てきます。そこで一度、さまざまなメーカーのトイレットペーパーを使って、どのトイレットペーパーが溶けやすいのかを実験してみたのですが、コストコのものはあまり溶けなかったですね」
川田さんが行った実験の映像はこちら。
どのトイレペーパーが水に溶けやすいいのか?
— かわちゃん@エアコン人間 (@kawaken1985) January 21, 2024
左から
①エリエール「シャワートイレのためにつくった吸水力が2倍のトイレットペーパー」
②コストコ「トイレットペーパー」
③ クレシア 「スコッティ フラワーパック 1.5倍長持ち」
④ 丸富製紙株式会社「緑茶の力 プレミアム 4ロール 」
結果発表↓↓ pic.twitter.com/iY6uPeTndE
工事業者としての実感だけでなく、検証してみた経験もあっての主張なのだ。
詰まりやすい構造のトイレ
では、コストコのトイレットペーパー以外では、トイレ排水管の詰まりを起こす原因として、どのようなものがあるのだろうか。
「国内メーカーの肌触りを重視した二重ロール、三重ロールの商品も水に溶かして実験してみたのですが、こちらも結構溶けずに残りました。コストコのものだからとか海外製のものだからダメで、国内製のものは大丈夫というのではなく、商品によって溶けやすいもの、溶けづらいものがあるようです」
商品によって詰まりやすいものとそうでないものがある、といわれても、水道周りの素人、トイレットペーパー選びの素人である我々が詰まりやすい商品を見抜くのは難しい。そこで、トイレの排水管を詰まらせないようにする方法を聞いてみた。
「トイレには構造上、詰まりづらい作りのものと、そうでないものがあります。前者のタイプはトイレとお風呂の位置が近い構造になっているもの。浴槽やシャワーでたくさんの水を使い、普段から排水管に大量の水が流れますから、トイレットペーパーが溶けずに残ったとしても水の勢いで排水できます。ですが、トイレが家の奥の方にあるとか広いお宅になると、トイレからの水の勢いだけで排水しなければならないので、どうしても詰まりやすくなります」
そういった構造のトイレの場合、詰まりを避けるにはどうしたらいいのか。
「一番いい方法は、水をたくさん流すこと。一般的な感覚では、トイレで用を足した場合、すべて拭き終わった後に水を流しますが、途中で一度流すぐらいの感覚で使ったほうが詰まる可能性は下がります。サイクロン式の節水型トイレは、一度に流す水の量を設定する機能があるので、トイレが奥のほうに設置されている家の場合は水量をMAXに設定したほうがいいでしょう」
サイクロン式のトイレの水量設定方法は、説明書やメーカーのホームページを調べると出てくるので、詰まる可能性が高い家の方は試していただきたい。
「流せるシート」系も詰まりやすい
ここまで、コストコのトイレットペーパー問題を機に、トイレの排水管詰まり問題を解消するためのテクニックをプロに聞いたが、トイレットペーパーの他にも詰まりやすいものはあるのだろうか。
「実は、トイレットペーパーよりも詰まるのが、流せるタイプのトイレシートです」
便座を拭く除菌シートや、便器の汚れを拭き取る使い捨てシートにはトイレットペーパー同様「そのまま流せる」ことがウリの商品がある。
「流せるタイプのシートを使っているご家庭のトイレの詰まりを直したことが何度もあるのですが、排水管からそのままシートが出てきます。水に溶けている感じがまったくないんですよね。どういった理由でトイレに流してOKとなっているのかはわかりませんが……」
そしてもう一つ、流す際に注意したほうがいいものがあるという。
「お薬を飲まれている方の便です。私は医者ではないので詳しいことはわかりませんが、一部の生活習慣病で処方される薬のなかには、便が軟らかくなる作用がある薬があるようです。排水管詰まりでうかがったお宅で、軟らかい便が排水管に張り付いているところが何件かあって、聞いてみたらお薬で便が柔らかくなっていたというケースが結構ありました」
流せるシートはトイレ内にゴミ箱を設置して捨てればいいが、ゆるい便をゴミ箱にというわけにはいかない。どういった対処が有効なのだろうか。
「便を出した後にいったん水を流して、拭き終わったらもう一度流すといった感じで、流す回数を増やすのが一番です。トイレシートもトイレットペーパーと一緒に流したら詰まりやすくなるので、便座シートを使い終わったら、用を足す前に一度シートだけを流すといったことを心掛けてください」
節水の逆を行く行為なので、躊躇してしまう方もいると思うが、排水管詰まりを防ぐには一番効果があるという。
詰まってしまった場合の解決法
そういった普段からの対策を講じても詰まってしまうことはあるだろう。その場合はどう対処したらいいのか。
「60度のお湯をバケツ一杯用意して、トイレに流してください。溶けづらかったトイレットペーパーや便が熱で溶ける場合があります。お湯を流す際に注意するのは、絶対に熱湯を流さないこと。排水管の多くは耐熱が80度ぐらいまでなので、熱湯を流すと管が破損します」
川田さんいわく「コストコのトイレットペーパーは詰まりやすいけど、肌触りが良くて価格もお手頃なので、お風呂の近くのトイレなど条件がいい場所であれば使っても問題ないでしょう」とのこと。また「詰まりやすい商品、詰まりやすいトイレの構造、詰まらないようにするための心がけを知っておくことで、トラブルを避けることができる」そうだ。
自宅のトイレが使用不能になると生活に大きな影響がある。そうならないために、我々水回りの素人も、自宅のトイレが詰まりやすい構造なのか、詰まった場合プロに頼む前にどんな対処法ができるのかを頭に入れておきたい。
(文=渡辺雅史/ライター、協力=川田賢興/イナセ代表取締役)