結局、CRJの保守・販売サービス事業を5億5000万ドル(590億円)で買収することで合意した。2億ドル(210億円)の債務も引き継ぐ。800億円を投下して大きなリスクを背負うことになった。ボンバルディアは小型機の機体製造を20年後半に終了し、この事業から撤退する。
三菱重工の甘い読み
CRJを買収すれば、小型機市場からライバルがひとつ消える。三菱航空機は100席以下の小型機は今後20年間で5000機超の新規需要が見込めると皮算用していて、約4割を占める北米市場は、ボーイング・エンブラエル連合との一騎打ちに持ち込めるとみている。
だが、CRJの買収はボーイングを刺激しそうだ。現在、スペースジェットの保守ではボーイングと協力関係にあるが、CRJ買収を通じて三菱側が自社サービスに切り替えた場合、ボーイングとの関係がぎくしゃくする可能性が高い。売り込みで正面衝突する場面が出てくれば、ボーイングとの関係は切れるとみられる。
「90席タイプは米国に投入できず、CRJが赤字なことでもわかるように、70席タイプは儲らない。三菱重工、三菱航空機の今後の経営は厳しいものになる」(世界のエアラインに詳しい関係者)
スペースジェットの初号機(旧MRJ)のANAホールディングス子会社、ANA(全日本空輸)への納入は、遅れに遅れて20年半ばまでずれ込む。
失敗の原因は何か。
「三菱ならではのプライドの高さにある。ジェット戦闘機をつくっているから、民間旅客機もつくれると思うのは間違いだ。戦闘機はほぼオーダーメイドだが、旅客機は量産能力が必要となる。三菱には開発技術はあるが、量産技術がない」(外資系証券会社のアナリスト)との厳しい指摘がある。
三菱重工の最高財務責任者(CFO)の小口正範副社長は、採算ライン(の受注)を「1500機ほど」と説明しているが、旧MRJの受注残は407機にとどまる。採算ベースに乗るのは、はるか先のことになる。
赤字を垂れ流し続けるなか、ボンバルディアの赤字の小型機事業を買収する。加えて70席タイプの小型機を投入する。傷口をさらに広げることになりはしないかと懸念する声も多く上がっている。