なぜ人は『ドラクエ』をやるのか?高くて「操作性悪い」と不評のスマホ版なのに…
私が寛容すぎるのかもしれませんが、「それでも、今のところはいいんじゃないのかな」と思います。操作にややイラつきながらも、粛々と進めているのが、ちょっとした快感なのかもしれません。
いや、私は『ドラクエ』をプレイするふりをして、思い出に浸っているだけなのかもしれません。ただ、不便さすらも楽しんでいる自分を披歴することで、余裕のある大人としての存在感を醸し出そうとしているわけではありません。
しかしながら、「こういう経験も含めて、ゲームをしているのだ」という感覚は持っています。昔は、バグ自体もゲームを盛り上げるひとつの要素として機能していることもありました。
例えば、ファミコンで発売された当初の『ドラゴンクエスト4 導かれし者たち』(エニックス)には、「8逃げ」というバグがありました。戦闘時に、「逃げる」コマンドを選択した回数が8回以上になると、味方の攻撃がすべて「会心の一撃」になるというものです。これを初めて知った時には、かなり興奮しました。なにせ、ボス級の敵も簡単に倒せるのですから。
このバグが発生したのは初回出荷版だけで、それ以降は修正されたようです。現在はアプリ版ですから、こういったバグがあったとしても、アップデートで随時修正されていくことでしょう。
私の場合、こういった不便さや理不尽さのようなものも、よき思い出としているためなのかもしれませんが、レビューに書かれているほど嫌なイメージは持っていません。
誤解を恐れずにいうと、いわゆる「スマホネイティブ」な若い人にこそ、こういった、もともと据置型ゲーム機用につくられたゲームをやってほしいと思います。
身体感覚を伴ったゲーム体験
1975年生まれの私と同世代の方のなかには、『ドラクエ』などのゲームを買うために数カ月前から予約したり、朝早くから行列に並んだり、不人気ゲームとの「抱き合わせ販売」を泣く泣く受け入れた経験を持つ人も多いのではないでしょうか。
また、ゲームを買いに行く前後に恐喝に遭い、お金やゲームを奪われるといったことも社会問題化しました。ちなみに、私は『ザナドゥ』(日本ファルコム)を買いに行く途中で恐喝に遭ったことがあります。
リリース前の情報は、最初は少年漫画雑誌のゲーム特集のページで公開され、やがてゲーム専門雑誌で少しずつ明かされるものでした。そして、その内容に心を躍らせていたのです。