在宅ワーク増加で喫煙者の家族に健康被害拡大の恐れ…喫煙後に呼気や服からも有害物質検出
新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅ワークが急増していますが、それはコロナが収束しても続く可能性が高そうです。現在はまだまだ手探りの部分はありますが、通勤がないことのメリットは大きく、今後も多くの会社が進めていくものと思われます。
通勤がなくなり家族のコミュニケーションの時間が増えるのはとても良いことなのですが、喫煙者がいる家族にとっては、その状態はかなり深刻な問題をはらんでいます。
コロナのことであまり話題にはなっていませんが、東京都では「東京都受動喫煙防止条例」が4月1日に発令され、84%に該当するお店で喫煙することができなくなります(喫煙専用ルーム除く)。また東京ほど厳しくありませんが、他のすべての道府県でも同様の条例が発令されています。今回の条例の発端になったのは、2016年の厚生労働省が発表した受動喫煙が原因による死亡者が、推測で1万5000人に上ったというレポートです。
また、東京大学が行った研究で、禁煙ルームをつくらず単純に分煙しただけでは受動喫煙の被害はほとんど緩和されないという研究も、この条例を後押ししています。
そのようなわけで、コロナ騒動後に久しぶりに居酒屋さんに行ったら「タバコが吸えない」という流れになっています。今までタバコを吸わないけど喫煙可能なスペースに行かざるを得なかった人にとっては朗報です。
しかし、冒頭に申し上げたように在宅ワークになると、喫煙者がかなりの時間を自宅で過ごすことになります。また外で喫煙しづらくなった分、家庭で喫煙することになると、家族に甚大な被害を及ぼすのです。
今では受動喫煙は常識になり、リビングなど家族みんながいる場所で吸うことはかなり減っていると思われます。しかし、今回覚えておいてほしい言葉は「三次喫煙」です。これはかなり新しい概念ですが、海外では近年、かなり研究が進んでいます。
米国科学アカデミーの機関紙「PNAS」では、車内に残留するニコチンが大気中の亜硝酸と反応して発癌性物質ニトロソアミンをつくったと報告されています。これはどういうことかというと、今まではタバコを直接吸う「主流煙」と、タバコの先から出る「副流煙」だけを問題にしていたのですが、どうやらタバコは、その煙がついた服やカーテンなどに付着して変化をし、その後長時間にわたり、その付近にいる人に悪影響を及ぼすことがわかってきたのです。
また、さらに衝撃的な事実として、1本タバコを吸ったあと8時間以上、呼気から有害な物質(一酸化炭素)が検出されました。産業医科大学の研究によると、喫煙後のTOVC(シックハウスの指標となる代表的な有害物質)が喫煙前に戻るのに45分かかることがわかりました。
そのような研究結果から奈良県生駒市役所では、喫煙後45分はエレベーターやバスに乗ってはいけないというルールが、安全衛生委員会によって正式に運用されています。
もちろん、まだ世界でも三次喫煙の研究は始まったばかりなので、はっきりとしたことは言えませんが、WHO(世界保健機関)も受動喫煙の被害は特に乳幼児に多大な悪影響があると警鐘を鳴らしています。
現段階で、かなり気をつけて屋外で喫煙しても、在宅ワークの場合、家族に悪影響を与えてしまうことは避けられません。そしてコロナであまり人と接しなくなった経験のあと、喫煙者と会話をするだけで3次喫煙を感じてしまう人も多数出てくると思われます。
まだ日本の働き盛りの男性は、約3人に1人が喫煙しています。ぜひこの機会に三次喫煙が愛する家族や周りの人間に迷惑をかけてしまうことを理解して、禁煙に踏み切ることを願っています。
(文=角谷リョウ/パフォーマンスコーチ)