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大量殺人などで注目される「責任能力」…刑罰が科されない「精神障害者」、再犯の恐れは?

取材・文=里中高志

法制化前の「責任能力なし」の精神障害者の行方

――医療観察法が制定される以前は、責任能力なしと判断された触法精神障害者は、どのような処遇を受けていたのでしょうか。

平林 「責任能力がない状態」は「心神喪失」、「責任能力が減弱している状態」は「心身耗弱」と区別されます。心神喪失は、妄想などの精神症状に完全に支配されている状態。一方の心神耗弱は、多少は現実的に対応する検討能力が残されている状態です。

 たとえば、「命を狙われている」という妄想を抱き、「殺せ」という幻聴に従って護身目的で事件を起こした場合、心神喪失または心神耗弱と判断されることがあります。

 いずれの場合も、医療観察法が施行される前は、一般の精神科病院で措置入院(自傷他害の恐れのある精神障害者を、本人の同意がなくても入院させられる制度)として扱われ、特化した治療制度はありませんでした。

――他害行為を行ってから、どのような過程を経て、こちらの医療観察法病棟へやってくるのでしょうか。

平林 ここへ来るまでに2回は精神鑑定を受けています。ひとつは「刑事責任能力鑑定」といい、この鑑定では、病気がどの程度犯行に影響を与えたかを明らかにします。その結果を受けて、裁判官または検察官は心神喪失なのか、心神耗弱なのかを判断します。

 その上で検察官が、裁判所に「医療観察法の治療を受けさる」申立てをします。そこで裁判所が、医療観察法に基づいた鑑定を再度行い、治療が必要と判断された場合は、医療観察法病棟へ入院させたり、指定する医療機関に通院しなさいといった命令が出されます。

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