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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」

スーパーの「顆粒だし」は使ってはいけない!化学調味料まみれ、料理をしないのは命を脅かす

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事

複数のだしを組み合わせると、うま味が数倍に

 だしというのは、食材を水や熱水に浸して、その食材の成分を溶け出させたものの総称ですが、私たちがだしを「おいしい」と感じるのは、そこに「うま味成分」と呼ばれるものが入っているからです。うま味は、塩味、苦味、甘味、酸味と並ぶ「基本五味」のひとつで、ほかの4つの味を組み合わせてもつくり出すことができないもので、ほかの4つの味と同様に、舌にある味蕾細胞で認識されます。

 日本のだしによく使われる昆布に含まれているのが、アミノ酸の一種である「グルタミン酸」です。グルタミン酸は、お茶、トマト、白菜などにも多く含まれています。また、鰹節に含まれている「イノシン酸」や、シイタケに含まれる「グアニル酸」は、核酸系のうま味成分といわれます。

 きちんととった昆布だしはとてもおいしく、味噌汁やお吸い物などの汁物に使ったり、煮ものや炊き込みごはんにも使われます。しかし、その昆布だしに鰹節が加わると、そのおいしさが幾倍にもなることが知られています。それは、私たちの味覚がグルタミン酸とイノシン酸を同時に摂取した時に、味覚受容体が急激に活性化することで味覚神経に刺激を与え、脳が強くうま味を感じるからです。違ううま味成分が同時に存在すると、感じ方が何倍にもなるのです。

 しかも、グルタミン酸に対して、20~80%のイノシン酸が加わった時に、最高のうま味が感じられるということもわかっています。多くのおいしいといわれる料理は、その割合を守っています。20~80%の間のどこをとるかについては、料理をする人と食べる人が決めるのです。要するにそれが「好み」です。

 また、うま味成分がしっかりあると、塩味の感じ方も変わってきます。きちんととっただしを使った料理は、塩の量が少なくてもおいしいと感じられるのです。一方、筆者の経験では、化学調味料を使うと塩の量は増える傾向にあります。それは、化学調味料には、天然のだしに存在しているグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸以外の複雑なうま味成分がないため、どうしても薄っぺらい味にしかならないからだと考えられます。そうなると、味を調えるためには塩味や甘みを加え、それでも足りないのでさらに化学調味料を加える、といった具合にどんどん濃い味付けになってしまうのです。

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

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