「痛み止め」は極めて危険、死の恐れも…心筋梗塞や脳卒中、腎不全のリスク増大
痛み止めはそうした薬の筆頭ですが、それ以外にACE阻害剤やARBと呼ばれる血圧の薬や、利尿剤と呼ばれる血圧や心臓の薬も、腎臓を悪くしやすい薬として知られています。しかし、実際には高血圧や心臓の悪い患者さんが、体の痛みで痛み止めを飲む機会は、決して少なくはありません。
2013年のブリティッシュ・メディカル・ジャーナルという医学誌に、複数の薬を一緒に使った場合の、急性腎不全の危険性を調査した論文が掲載されています【註1】。それによると、ACE阻害剤もしくはARBと利尿剤を一緒に使用している状態で、痛み止めを飲むと、急性腎不全の危険性が30%程度増加するという結果が得られています。つまり、血圧の薬を複数飲んでいるような人は、痛み止めを飲むことで腎臓の悪くなる危険が、より大きいので注意が必要なのです。
心筋梗塞を起こした人が痛み止めを飲むことの危険性
心筋梗塞を起こした後では、抗血小板剤といって、血液を固まりにくくするような薬が使用されます。そうした患者さんでも、当然頭痛や腰痛などの痛みが起こることはありますから、痛み止めを使う機会はあります。
しかし、抗血小板剤は血を止まりにくくする薬で、痛み止めは胃潰瘍を起こしやすくする薬ですから、その両方を使うことで、重症の出血の副作用が増えるという可能性は否定できません。
15年のJAMA誌に掲載された論文によると、心筋梗塞後で抗血小板剤を使用している患者さんが痛み止めを使用すると、出血の危険が2倍に増え、心筋梗塞の再発などの危険性も1.4倍に増える、という結果が報告されています【註2】。これはデンマークのデータですが、非ステロイド性消炎鎮痛剤であれば、薬の種類にはかかわらず、その危険性は同じように示されています。さらには痛み止めを3日くらい使用しただけでも、危険性は増すことが指摘されています。
マラソンの前に痛み止めを飲むのは危険!
マラソンが大ブームですが、ここでも痛み止めの使用が問題になっています。13年のBMJ Open誌に掲載された論文によると、ドイツで行われたマラソン大会において、アンケートに回答した参加者のほぼ半数が、マラソンの前に痛み止めを使用していた、と報告されています【註3】。
これは痛み止めを使用することにより、マラソン中の筋肉痛やこむら返りが予防できる、という考えによっているようです。しかし、このような安易な痛み止めの使用に、健康上の問題はないのでしょうか?
上記文献の解析では、痛み止めの使用により血尿や動悸などの症状が飲まない場合の数倍(多いものは10倍)多く認められています。こむら返りは確かに予防されているのですが、筋肉痛の予防効果は認められませんでした。