「痛み止め」は極めて危険、死の恐れも…心筋梗塞や脳卒中、腎不全のリスク増大
マラソンのような運動時には脱水状態になりますから、腎機能が低下する危険性も高まります。健康な人でももちろん危険はあるのですが、特に心臓や糖尿病など持病をお持ちの方は、くれぐれもマラソンの前に痛み止めは飲まないようにしてください。
痛み止めの種類によって危険性には差があるのか?
非ステロイド性消炎鎮痛剤には多くの種類があります。それでは、その種類によって危険性には差があるのでしょうか?
COX-2選択性阻害剤という薬があり、日本で使用されているのはセレコキシブ(商品名セレコックス)のみです。このタイプの薬は他の痛み止めと比較すると、胃潰瘍などの出血系の副作用は確実に少なくなっています。16年のニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンという医学誌に掲載された論文によると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の発症については、セレコキシブは格段に少なく、腎障害の副作用もやや少ない傾向にありましたが、心筋梗塞や脳卒中の危険性についてはほかの薬剤と差がありませんでした【註4】。
痛み止めとの賢い付き合い方
非ステロイド性消炎鎮痛剤は即効性のある痛み止めですが、副作用もあるので、その服用は必要最小限にするなど注意が必要です。特に高血圧の薬を飲んでいたり、心臓の病気があるなど、持病のある人は特に副作用が出やすいので、必ず主治医の先生に確認した上で使用することが必要です。薬には多くの種類がありますが、セレコキシブは胃潰瘍などの副作用が少ないので、胃の弱い人はそちらを使用するほうが安心です。
皆さんも痛み止めを賢く使用してください。
(文=石原藤樹/北品川藤クリニック院長)
【参考文献】
【註1】Lapi F, Azoulay L, Yin H, et al. Concurrent use of diuretics, angiotensin converting enzyme inhibitors, and angiotensin receptor blockers with non-steroidal anti-inflammatory drugs and risk of acute kidney injury: nested case-control study. BMJ. 2013 Jan 8; 346: e8525.
【註2】Schjerning Olsen AM, Gislason GH, McGettigan P, et al. Association of NSAID use with risk of bleeding and cardiovascular events in patients receiving antithrombotic therapy after myocardial infarction. JAMA. 2015 Feb 24; 313(8): 805-14.
【註3】Kuster M, Renner B, Oppel P, et al. Consumption of analgesics before a marathon and the incidence of cardiovascular, gastrointestinal and renal problems: a cohort study. BMJ Open. 2013 Apr 19; 3(4).
【註4】Nissen SE, Yeomans ND, Solomon DH, et al. Cardiovascular safety of Celecoxib, Naproxen, or Ibuprofen for arthritis. N Engl J Med. 2016 Dec 29; 375(26): 2519-29.