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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

胃がん原因の98%・ピロリ菌、除菌で食道がんリスク増や必要な菌除去で腸内バランス崩壊も

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

除菌による副作用

 一方、服用中の副作用としては、主に軟便や下痢があります。ほかにも味覚異常、肝臓の検査値の変動や、まれにかゆみや発疹などアレルギー反応が現れる人もいます。

 ピロリ菌の除菌といわれると、ピロリ菌のみを除菌しているように思う方も多いかと思いますが、抗生物質は「菌」が身体にとって良い菌か悪い菌かを判別することができません。抗生物質は身体の中にある常在菌を、良い働きをしているものまで、ことごとく除菌してしまうのです。

 抗生物質を飲んで下痢や便秘をしたことのある方は多いと思います。それは、抗生物質が悪い菌だけでなく良い菌も殺してしまい、腸内のバランスを崩してしまったからです。この副作用は、ピロリ菌除去のための抗生物質を飲んだ時にもよく起こります。

 腸の中には、免疫細胞の8割があることがわかっています。そこに強力な抗生物質を長期間送り込むのですから、ピロリ菌が消える前に身体のどこかに不具合が出ても不思議ではありません。ピロリ菌をガンガン叩こうとすることで、別なところにまで火花が飛び散り、身体が傷つけられているかもしれないのです。

 かわいい名前とは裏腹に、ピロリ菌は今や「日本人の仇」のように扱われていますが、胃液の逆流を防ぐといった働きがあり、食道がんや食道炎を抑制する作用も報告されています。つまり、除菌することで、食道がんになるリスクを高めるかもしれないのです。そうだとしたら、なんとも皮肉な話です。

 中学生にピロリ菌検査を行い、陽性の生徒には除菌を薦めるという自治体も出てきました。ピロリ菌を持っていて、すでに胃粘膜の炎症や委縮が認められる場合には、除菌をすることで胃がんになるリスクを減らすことができるでしょう。しかし、ピロリ菌を持っていても、胃粘膜の異常がなければ、役に立ってくれているかもしれないピロリ菌を、腸内バランスを崩してまで除菌することが、はたして必要なことなのでしょうか。

 私は、「ピロリ菌を持っていても除菌は不要で無防備でよい」などというつもりはありません。単に「胃がんの原因となるピロリ菌をなくしてしまえばよい」というのではなく、「胃を酷使しない」「胃をいたわる」ことが大切だと考えているのです。

 そのためには、暴飲暴食をしない、塩分の濃いものを摂りすぎない、食事の時間を不定期にしない、よく噛んで唾液をふんだんに出す、刺激が強い(熱すぎる、味が濃すぎる、からすぎる)食べ物を避ける、ストレスをため込まない、などが重要です。

 さらに、私が実践しているのは、「ファスティング=酵素断食」です。ストレスをためずに暴飲暴食をしないとはいいつつ、日常の中でなかなか守れないものです。胃に無理をさせていると感じることもしばしばあります。

 そこで、酷使している胃を休め、いたわる時間をファスティングによってつくっているのです。次回は、そのファスティングについて詳しく説明いたします。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

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