1990年代終盤、日産自動車がミニバン「セレナ」のCMで「モノより思い出」というコンセプトを打ち出したのを覚えている人もいるだろう。それと同様に、外国人観光客も「日本でしか味わえない体験」を求めているようだ。
サムライ、花魁、茶道…体験サービスが乱立状態
そして、こうした外国人観光客のトレンドに目をつけ、あの手この手で外国人を取り込もうと躍起になっているのが日本の観光業界である。
たとえば、「SAMURAI STUDIO」という甲冑専門のフォトスタジオでは、職人の手で忠実に再現された本格的な甲冑を着用してプロのカメラマンに撮影してもらえる。日本=サムライというイメージを持つ外国人はいまだに多く、SNS映えするキャッチーな写真が撮れるため、外国人観光客に好評だという。
また、石川氏が言うように「着物」も人気だ。浅草や京都には花魁に変身して写真を撮影できる着物レンタルや、芸者や舞妓を体験できるサービスなどが複数存在するほか、茶道具の一式をレンタルして専任のスタッフに指導してもらえる茶道体験、日本庭園を再現したトイレのある施設……と、この手のサービスを挙げれば枚挙に暇がない。
「私たちの『インバウンドインサイト』では、外国人観光客に関するさまざまなデータを提供していますが、SNSデータの解析には特に力を入れています。インスタグラムやツイッターで一般公開されている発信内容をリアルタイムで収集解析し、独自のロケーション解析結果として企業や自治体などに提供しています。
インバウンド対策を成功させるためには、外国人が何を求めているかについて具体的なデータが必要。その際に、彼らが発信するSNSの投稿内容にも注目することで、定量的な調査では表れてこない本当のニーズや気づきが得られることが強みです」(同)
石川氏によれば、外国人観光客の定量的な動向は各社のアンケートデータや旅行予約データ、スマートフォンやアプリのログなどからの統計データとして利用することは可能で、さらにそれらの情報とSNS解析結果を組み合わせることで、より精度の高い情報が得られるという。こうした情報から導き出されたのが、「コト消費=体験」というトレンドだったわけだ。
フランス人や中国人にはアニメの聖地巡礼が人気
もちろん、マンガやアニメ、それらを交えた「Kawaii(かわいい)文化」もまだまだ外国人観光客に人気が高い。なかでも盛んなのが、マンガやアニメの舞台になったとされる場所や縁のある土地を実際に訪れる「聖地巡礼」だ。