一般的に中間管理職は上にも下にも挟まれ、ストレスが多い役職だといわれています。この人たちに、さらに労働時間という負荷がかかるかたちとなってしまった中間管理職の働き方は、改革なのか改悪なのかは議論の余地がありそうです。
そこで、やはり現状の三六協定の対象となっている若手社員にも、可能ならばもっと働いてもらおうというのが、裁量労働制の対象拡大の真意だと私は感じます。
裁量労働制のもとでは、社員は結果で評価されるから早く帰宅できるといいます。しかし、現場では往々にして、結果を出せる優秀な人にこそ仕事は集まります。優秀な社員で早く帰っているのは、私の知る限りごく少数派です。多くの優秀な社員は、その上司が疲労によるバーンアウト(燃え尽き症候群)を心配するほど、日夜働いています。
実際にこの1年間、管理職からの相談内容は、メンタル不調者の部下をどうするかよりも、チームのエースが働きすぎ(働かせすぎ)で心配だという相談が、増えた気がします。
正規・非正規の処遇の差解消
次に、正規・非正規の不合理な処遇の差をなくすための公正な待遇の確保は、どうなっているのでしょうか。
わかりきったことではありますが、非正規社員を正規社員にするためには賃金コストの増加が避けられません。また、景気に合わせて人員を増減させることも難しくなります。それを上回るメリットがない限り、企業が非正規社員の正規社員への切り替えに消極的なのは、誰も声を大にして言いませんが、皆わかり切ったことです。
さらに、企業が労働者の公正な待遇のために同一労働同一賃金を唱えるのであれば、新たな問題が生じます。グローバルかつボーダレス時代の今日、同一労働同一賃金体制は国内だけにはとどまらないでしょう。海外と国内で同じ業務をやっているのであれば、この社員たちの賃金は同じになるべきです。もちろん、安いほうに揃えられるのが、企業としては理にかなっていますので、多くの場合、日本における給与は減る見込みです。
総じてみると、非正規社員の正規雇用化で企業の人件費は増しますが、グローバル時代の同一労働同一賃金体制で、正社員の給料は減ると予想され、企業にも正社員にもウインウインの結果は見えにくく、働く人びとの処遇の差は縮小しても、肝心なやる気スイッチは押してはくれなさそうです。