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堀美智子「薬剤師の目!」

「サバにアレルギー」の危険な誤解…アレルギーと思い込み、ヒスタミン中毒やアニサキス症悪化も

文=堀美智子/薬剤師、医薬情報研究所/株式会社エス・アイ・シー
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 保存状態が悪くヒスタミンができてしまうのは、家庭や給食などでの問題だけではありません。2013年10月、「はごろもフーズ」が製造・販売するシーチキン缶3種・計672万個を自主回収した過去があります。回収の理由は、シーチキン缶の材料のカツオを冷蔵庫で保存する際に、大量に入れたため庫内の温度にむらが発生して、細菌が増殖しカツオに含まれるヒスチジンをヒスタミンに変えたことによるものでした。缶詰にも注意ですね。

「同じサバを食べたけど、家族は大丈夫で私だけじんま疹が出た! だから私はアレルギーではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。同じ魚でも、モルガン菌が繁殖した部分を食べた人にしか症状が出ないこともあり得ます。また、結核の薬であるイソニアジドは、ヒスタミン代謝に関係する酵素の働きを抑えてしまい、ヒスタミンを含む魚類を食べると、体内にヒスタミンの蓄積が起こり少量のヒスタミンでもヒスタミン中毒を引き起こすこともあります。食べた部位の状態や服用中の薬によっては、家族で一人だけ症状が出ることもあります。

(2)アニサキスアレルギーについても知りましょう!

 ときどき耳にするアニサキス症。魚に寄生している幼虫で、長さ2~3センチ、幅0.5~1ミリくらいで、白い糸のように見えるのですが、生きたアニサキスが胃などに食い込んで激痛を引き起こすことで知られています。

 ところで、岐阜大学の粕谷志郎らが、1990年にサバを食べてアレルギーを起こした人たちを検査したところ、サバに対してアレルギーを示すIgEを持っていなかったが、アニサキスに対するIgEを全員が有していたという、とても興味深い報告がなされ、アニサキス症はアレルギーが関係すると注目されるようになりました。

 もちろんアニサキスはサバだけではなく、イカやいろいろな魚に寄生しますから、魚を食べると腹痛やじんま疹が出る方は、アニサキスアレルギーの検査をお勧めします。アニサキスアレルギーは複雑です。生きている虫体にアレルギーを示す人、死んだ虫体にアレルギーを示す人、アニサキスが分泌するものにアレルギーを示す人など、多様です。刺身を食べないからアニサキスは大丈夫とはいえないのです。アニサキスアレルギーの治療は、もちろん抗ヒスタミン薬などのアレルギーを抑える薬が有効です。検査をしてアニサキスアレルギーだとわかれば、念のため抗ヒスタミン薬を携帯されるといいです。いつどこでアニサキスを含むものを食べるかわからないからです。

(3)サバにアレルギー

 サバのタンパク質にアレルギーを示す。少ないとは思いますが、これもないとはいえません。サバにアレルギーならサバを食べたら、いつもアレルギー症状を示します。

(1)や(2)の場合は、サバを食べても、ヒスタミンが少なかったり、アニサキスが寄生したサバでなければじんま疹などアレルギー症状を引き起こすことはありません。体調が悪いときだけサバを食べるとアレルギーが出るという人は、(1)や(2)の可能性が高いといえます。

 患者さんが記入した質問票に「サバにアレルギーがある」との記載を見ると、薬剤師は「アニサキスアレルギーは大丈夫かな」「古いサバ食べたのかな」と考えます。この考え方を、皆さんの常識にしていただけたらと思います。
(文=堀美智子/薬剤師、医薬情報研究所/株式会社エス・アイ・シー)

堀美智子/薬剤師、医薬情報研究所/株式会社エス・アイ・シー

堀美智子/薬剤師、医薬情報研究所/株式会社エス・アイ・シー

薬剤師。医薬情報研究所(株)エス・アイ・シー取締役/医薬情報部門責任者。 名城大学薬学部卒。同大薬学部医薬情報室、帝京大学薬学部医薬情報室勤務を経て、1998~2002年日本薬剤師会常務理事。1998年より現職。2015年より日本女性薬局経営者の会 会長。
医薬情報研究所/株式会社エス・アイ・シー

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